持続可能を目指し 適正化へ 気仙の3施設は今後の方向性示す 公共施設等総合管理計画 県が第2期最終案を公表

 県は、令和7年度から16年度までの10年間を期間とする「第2期公共施設等総合管理計画」の最終案を公表した。本年度から30年間に全ての県有施設を維持・更新する場合、経費見込みは総額で2兆円余りに上ると試算。持続可能な施設管理に向け、コスト縮減や施設規模・配置・機能等の適正化などを図る。参考資料には、気仙の3施設を含む67施設の評価と今後の方向性をたたき台として示し、大船渡市内の2施設は地域の状況なども踏まえて個別にあり方を検討していく考えだ。(三浦佳恵)

 

 同計画は、県が保有する庁舎や県民利用施設、道路、河川管理施設、県立病院、学校といった公共施設の適切な維持保全と財政負担軽減の両立を図ろうと策定。第1期は平成27年度の策定後、令和4年度の改訂を経て6年度までの10年間進められた。
 その結果、6年度末時点で対象施設の延べ床面積は153・1万平方㍍と、2年度末と比べて3・5%(5・5万平方㍍)を削減。維持管理にかかる県民1人当たり決算額は1万1996円と、計画した1万2000円以下に収まった。
 一方、この間に人口減少、公共施設の老朽化が進み、新型コロナウイルスのまん延を契機にデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展。賃金の引き上げや物価高による労務費・資材費の高騰も生じるなど、社会経済情勢は大きく変化した。
 第2期計画では、現在県が保有する公共施設全てを維持すると仮定し、本年度から30年間にわたる維持・更新などの経費見込みを試算。公共施設(別図①)は約1兆713億円、道路などのインフラ施設(同②)は約1兆1073億円、県立病院などの公営企業施設は約4409億円となった。
 総額は約2兆6196億円で、第1期計画から約8958億円の増。施設の老朽化や社会経済情勢の変化、災害への対応、財政負担の軽減などを踏まえた適正化、維持管理が求められている。
 第2期の基本的な方針には、▽コスト縮減・財政負担の平準化▽施設規模・配置・機能等の適正化▽安全・安心の確保──を設定。具体的には、定期的な点検・診断、計画的な維持管理、耐震改修促進計画等の推進、長寿命化対象の選別、施設規模・総量の適正化と有効活用などを見据える。
 管理目標のうち、県民1人当たり決算額は物価や賃金の動向を踏まえ、第1期を4000円上回る「1万6000円以下」に設定。公共施設全体の延べ床面積は第1期では除外した学校も対象とし、2年度の259・7万平方㍍から22年度までに15%(38・9万平方㍍)程度削減する。
 また、施設の適正配置や総量の適正化の取り組みを一層推進するため、部局ごとに施設の利用状況、建物性能などを整理した「公共施設カルテ」を作成。カルテに基づく評価・分析を行ったうえで、大規模施設等整備事業の必要性や優先度を評価し、今後のあり方を検討する。
 参考資料では、第1期で県民利用施設に分類されたり、直近で建て替え・改修などを予定する67施設に関し、同カルテをもとに評価。今後、社会情勢や財政状況を考慮したうえで、個別に具体のあり方を協議するための〝たたき台〟として、それぞれの方向性を示した。
 対象となった気仙の3施設のうち、陸前高田市の県立野外活動センターは現状を維持し、ほかの県内青少年の家との複合化・集約化を推進する。大船渡市の大窪山森林公園は県民の森(八幡平市)への集約化を前提に解体を、福祉の里センターは機能の廃止を見据えて売却・移管する方向性を示し、地域も交えて今後のあり方を検討する。
 県は12月17日(水)まで、最終案(参考資料は除く)に対する県民からの意見を募集し、年内の策定を目指す。資料は、大船渡地区合同庁舎や県ホームページから閲覧できる。
 意見がある場合は、岩手県総務部管財課へ郵送(〒020・8570※住所記載不要)、ファクス(019・629・5139)、メール(AH0005@pref.iwate.jp)のいずれかで提出を。電話での意見は受け付けない。
 問い合わせは同課(℡019・629・5037)へ。