林野火災注意報・警報1月1日から運用へ── 火災予防条例を改正 教訓踏まえ大船渡地区消防組合議会で可決
令和7年11月27日付 1面
大船渡市と住田町による大船渡地区消防組合議会(宮﨑和貴議長、議員8人)が26日に同市役所で開かれ、冬~春にかけての強風・乾燥時における林野火災注意報・警報の発令に向け、火災予防条例の一部改正を可決した。注意報・警報の運用開始は来年1月1日(木)。2月26日に発生した大船渡市大規模林野火災の教訓を踏まえた国の通知に基づき、警報時は罰則付きで屋外での火の使用等を制限するほか、平時からの広報・啓発にも力を入れる。(佐藤 壮)
条例改正は、新たに林野火災の予防に関する事項を追加。組合管理者が、大船渡市と住田町に対し、必要に応じて注意報・警報を発令することができる。
注意報時は、林野火災発生の危険性を踏まえ、火の使用制限に従うよう努める。具体的には▽山林や原野で火入れをしない▽花火や火工品を使用しない▽屋外で火遊び、たき火をしない▽山林や原野で喫煙をしない▽たばこの吸い殻を含む残火や灰、火の粉を始末する──を求める。
発令基準は、注意報が「前3日間の合計降水量が1㍉以下で、前30日間の合計降水量が30㍉以下」「過去3日間の合計降水量が1㍉以下で、乾燥注意報が発表」のいずれかに該当する場合。降水が見込まれ、積雪がある場合は発令しないこともある。
期間は1月~5月。警報は、注意報の発令指標に加え、強風注意報が出ている場合となる。
注意報時における火の使用制限は努力義務だが、警報時は消防法に基づき、30万円以下の罰金または勾留の罰則が発生する。条例改正ではこのほか、火災とまぎらわしい煙、火炎を発する恐れのある行為に、たき火が含まれることの明確化などを定めた。
条例は1月1日施行で、同日に運用開始。組合では11月~12月にかけて制度運用の住民周知に力を入れる。注意報・警報が発令された場合は、防災行政無線や消防車両による巡回で周知・広報を行うことにしている。
議会終了後、鈴木将消防長は「実効性を高めるためには住民周知が重要であり、今後はチラシ配布に加え、さまざまな情報媒体を生かしていく。大船渡市での大規模林野火災を教訓として改正されたものであり、全国的にも先頭を切る意気込みで林野火災防止に取り組んでいきたい」と話していた。
林野火災注意報・警報を巡っては、4月~8月にかけて開催された消防庁と林野庁による「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」でも議論され、報告書では創設や的確な発令を提言。今月21日の県による第5回火災警報に関する検討会で取りまとめた林野火災予防のための新たな取り組み方策の最終案にも、注意報・警報の発令が盛り込まれている。
林野火災は降水量が少ない状態で、落ち葉など林床可燃物が乾燥すると、発生しやすい状況になる。さらに、その状況が長く続くと延焼しやすく、より危険性が高まる。
大規模林野火災が発生した2月26日の大船渡市は、午後からは晴れ間が広がった。同13日ごろから1日の最小湿度が35%前後と空気が乾燥した状態が続き、同18日~26日には乾燥注意報が発表されていた。
今年2月の月降水量は2・5㍉で、観測史上最も少なく、特に直近8日間は降水量の観測がなかった。同26日朝には、県全域に乾燥注意報が出ていた。
同日の天候は警報に該当する。一方、同19日に三陸町綾里で出火し、焼損面積が324㌶に及んだ林野火災は、強風注意報が出ておらず注意報基準に当たる。
令和4~6年発令基準に該当する平均日数は、市内では注意報が52日で、警報が15日。注意報の該当は、1月が16日、2月が12日、3月が8日、4月が5日、5月が3日、11月が2日、12月が6日。警報は1月が5日、2月が3日、3月が1日、4月が3日、12月が3日となっており、冬~春に集中している。
大規模林野火災では、消防覚知から約2時間で延焼範囲は600㌶以上に達し、最終的には約3370㌶と、昭和39年以降では最大となった。
一方、当時の乾燥・強風状態は近年においては珍しくなく、予防体制の充実が求められるほか、全国的にも率先して火災予防の取り組みを進められるかといった観点でも、今後の展開が注目される。
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消防組合議会ではこのほか、令和6年度一般会計決算に加え、7年度一般会計補正予算などを原案通り認定、可決した。決算は、歳入13億9533万円、歳出13億7675万円となり、差し引きは1858万円の黒字となった。
令和6年1月~12月における火災発生件数は、抑止目標12件に対して9件。前年比では11件減少した。
救急出動件数は2007件(大船渡市1682件、住田町325件)で、同比123件の減。搬送人員は1910人(大船渡市1599人、住田町311人)と、同比で140人少なかった。






