景況に一部回復の兆しも 大船渡商議所会員事業所対象のアンケート調査 「減少・悪化」減り業況判断指数改善

 大船渡市と大船渡商工会議所が10月に実施した同商議所会員事業所対象のアンケート調査で、昨年9月との売り上げ比較で「減少した」と回答した割合が51・2%となった。採算面は46%、業界の状況では59・5%がそれぞれ「悪化」と回答。厳しい景況が続く一方、いずれも前回調査よりも回答割合が減少し、「増加・好転」と「減少・悪化」の差し引きによる業況判断指数(DI)は前回調査から改善した。市などでは今回の調査結果等を参考にしながら、対策を講じることにしている。(佐藤 壮)


 この調査は、物価高騰等の影響が幅広い業種に及ぶ中、地域経済や中小企業の状況を把握し、適切な支援などにつなげようと実施している。会議所の会員事業所から業種バランスを考慮して600事業所を選定。289件の回答があり、回収率は48・2%だった。
 今年9月における前年同月比の売り上げ、採算、資金繰り、業界の状況の各回答は別掲の通り。売り上げのうち「5%以上減」が17%、「10%以上減」が13・8%、「15%以上減」が5・9%、「20%以上減」が6・9%、「30%以上減」が8%、「50%以上減」が6・6%となっている。「増加した」は22・5%で、前回調査から0・9ポイント伸びた。
 「50%以上減」と回答した業種では、農林漁業が16・7%で最多。次いで「その他の製造業(窯業、電気機器製造業、木材・金属・FRP加工業)」が14・3%、建設業が12・5%。「増加した」の割合は医療・福祉が45・4%で、運輸業が42・9%、食料品製造業38・1%だった。
 前回の調査から、景況感を示す業況判断指数を調査項目に入れている。「増加」「好転」などの回答割合から「減少」「悪化」などの回答割合を引いたもので、景況感の相対的な広がりを測る指標となる。
 今回の調査では、売上高の同指数はマイナス32・2(前回比7・5ポイント増)、採算は同37・7(同9・1ポイント増)、資金繰りは同29(同7・1ポイント増)、業界の景況は同58・5(同3・8ポイント増)。厳しい景況感ではあるが、数値は改善した。市や商議所では今後も同じ質問を行うことで改善や悪化の動向を把握することにしている。
 物価高騰の質問で「影響を受けている」と答えたのは77・1%で、前回比1・0ポイント増。業種別では、宿泊業の100%、食料品製造業の95・2%、飲食業の95・0%が特に高かった。
 コスト増加に対する価格転嫁では「全く転嫁できていない」が20・4%で、前回調査時から4・2ポイント減。「転嫁できたのは半分に満たない」は31・8%で、「半分以上は転嫁できている」は29・4%となった。
 今後懸念される影響は複数回答も可とした。「売り上げ・受注の停滞、不振」が最多の70・9%で、特に宿泊業、卸売業、小売業で高かった。「資金繰りの悪化」は47・8%、「価格転嫁への対応」は46・5%だった。
 「新しい取り組み(新事業・商品・サービス)」に関する質問の全体回答(複数回答可)では▽新規事業の予定はない46・4%▽必要性を感じるが実施していない33・9%▽すでに取り組んでいる12・8%▽試験的にサービス・商品を提供している6・6%▽事業計画を策定中6・6%──の順となった。
 必要とされる支援策(同)では「エネルギー(燃料・電気・ガス)価格高騰に対する支援」が55%。「売り上げ減少事業者への補助金・給付金」も49・8%と高く、「原材料や資材高騰に対する支援」は42・6%、「賃金の引き上げに対する支援」は38・8%だった。
 市では、調査結果を施策検討に生かす方針。政府は21・3兆円規模の総合経済対策を閣議決定し、足元の物価高対応として地方自治体が行う地域のニーズに応じた物価高対策支援に向けて重点支援地方交付金を拡充する方針を示しており、今後の取り組みが注目される。
 伊勢徳雄商工企業課長は「右肩下がりが続いていた状況から回復の動きも一部見られ、さらに上向きになるよう期待している。ガソリン販売価格の下落といったプラス面の動きもある半面、冬場の閑散期に入ることから、商工会議所などと連携しながら手を打っていきたい」と話している。