港町同士のつながり息長く 大船渡水産物商業協が能登半島地震被災地訪問 七尾魚商業協と共同で炊き出し 石川でサンマすり身汁320食を提供
令和7年12月2日付 7面
サンマ直送便事業などを手がける大船渡水産物商業協同組合(新沼哲理事長)はこのほど、能登半島地震で被害を受けた石川県七尾市で炊き出しを行った。復興支援の一環で、七尾魚商業協同組合(中田誠代表理事)などに大船渡産のサンマを送った縁がつながり実現したもの。大船渡の郷土料理として親しまれるサンマのすり身汁を提供した新沼理事長(68)は「復興はまだまだ。息の長い支援を続け、港町同士の縁をつなぎたい」と思いを寄せる。(菅野弘大)
「大船渡港さんま直送便事業」を展開する大船渡水産物商業協は昨年、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県の県水産物商業協同組合連合会と七尾魚商業協にそれぞれ大サイズ500匹を送る支援活動を実施。石川県水産物商業協では、金沢市でのイベントで炭火焼きなどとして振る舞い、七尾魚商業協では、かば焼きと塩焼きにして七尾市内の小中学校とこども園の給食で提供した。
今年4月には、支援への感謝と大規模林野火災のお見舞いとして、七尾魚商業協の中田代表理事(53)が大船渡を訪問。サンマ給食を提供した七尾市の和倉こども園の園児らが寄せた火災被害への激励メッセージと、七尾魚商業協からの見舞金を贈り、つながりをさらに深めた。
かねてから「サンマのすり身汁を振る舞いに行きたい」と口にしていた新沼理事長。多忙なスケジュールの合間を縫って計画を立て、先月23日に組合員と2人で大船渡を出発し、約10時間かけて現地入りした。
会場となった中島ストアー前では24日、提供開始前から多くの来場者が列を作った。大鍋ですり身汁320人前を調理し、七尾魚商業協が用意したカキご飯とともに振る舞い、2時間で〝完売〟した。
来場者の中には、電話で知人に食べに来るよう誘ったり、『どうやったらこの味が出せるのか』と驚く人も。大船渡で東日本大震災を経験したという元北里大生の姿も見られ、久しぶりに食べたなじみの味に感激していたという。
想定を上回る盛況に、新沼理事長は「次から次へと調理に追われ、焦ったが『おいしかった』と絶賛してもらえてうれしかった。食で元気を届けることができて、思い切って行って良かった」と笑顔を見せた。
中田代表理事も「すり身汁が本当においしかった。被災地を気にかけ、行動に移せる人はすごい。『これからも支援を続ける』という言葉がありがたかった。これからも行ったり来たりを続けながら、つながりを保ちたい」と感謝した。
地震被害を受けた七尾市の和倉温泉にも宿泊し、現地の惨状を目の当たりにした新沼理事長。「日常通りに生活している場所もあるが、和倉温泉は崩れた建物を取り壊した更地がたくさんあり、ショックというか、人ごとではないなと感じた。水の供給も復旧していなかったり、まだまだ先は長い」と心を痛めた。
それでも、震災の経験から「(支援は)1、2年ではだめ。長くやっていく、続けていくことが大事」と語り、「林野火災も心配し、気づかってもらった。被災した港町、同じ商売の仲間として、これからも縁をつなぎたい」と力を込める。






