どう動く 大船渡市長選 1期目現職の態度焦点 任期満了まで残り1年

▲ 次任期の大船渡市政を担うリーダーは誰に

 大船渡市の渕上清市長(67)=盛町=は、3日で1期目の任期が残り1年となった。来年の市長選に対する態度はまだ示しておらず、当面は表明時期が焦点の一つとなる。新人の動きもまだ見えないが、今後は現市長が掲げた公約の達成状況や、大規模林野火災からの復旧・復興に向けた取り組みへの評価などが、影響を与えるとみられる。次任期には人口が3万人を割ることが予想され、地域福祉や産業面でも課題が山積する中、前向きなまちづくりが展開できるかも問われる。(佐藤 壮)

 

人口3万人割る見通し 課題山積

 

 渕上氏は1日、東海新報社の取材に応じた。1期目の3年間を振り返り、「これまで支えていただいた市民、議会、職員の皆さんに感謝を申し上げたい。あっという間の3年間だったが、選択と集中を目指し、全力を尽くしてきた。今後は大規模林野火災の復旧・復興はもちろんだが、これまで歩んできたことを深く見つめ直したい」と語る。
 残りの任期に向けては、初当選を飾った選挙時から掲げる▽地元の産業を強く元気に▽若者の活躍でみんな笑顔に▽支え合ってみんな幸せに──からなる「未来への三本柱」を強調。経済と子育て分野を軸とした政策展開にも意欲を見せる。
 さらに、「『まちの若返り』をキーワードにしたい。組織も地域においても支え手が不在になるなどしている。さまざまなチャレンジへの応援も意識していきたい」と見据える。
 次期市長選に関しては「残りの任期を一生懸命務める」と語るにとどめた。態度を固める要素としては、大規模林野火災被災者の生活再建支援、ふるさと納税寄付を生かした安定的な財政運営、国道107号新白石トンネル整備、ILC(国際リニアコライダー)誘致、1期目の任期中に策定した市スポーツ施設整備基本計画の各中間見直しも挙げ「しっかりと緒に就ける取り組みが、一つの判断材料になっていくのでは」と話す。
 表明時期についても「今は考えていない」とする。今後、後援会(今野武義会長)とも相談し、意思を固めるものとみられる。
 令和4年11月27日投開票の市長選は、3期12年務めた戸田公明前市長が勇退した中で行われた。前年11月に新人が起意を表明したのを皮切りに、史上最多の5人が出馬する混戦となった。
 渕上氏は全投票数の38%にあたる7578票を獲得し、初当選を飾った。各種活動や市議会議長などでの知名度に加え、市内全域に後援会支部を立ち上げるなど、組織的な展開で幅広く浸透した。
 次期市長選は通算21回目で、三陸町との合併後は7回目、東日本大震災後は4回目となる。市長にはこれまで、渕上氏を含め10人が就任。半世紀前にあたる昭和51年3月以降の市長はいずれも2期以上務めてきた半面、この間、市長選が無投票で終わったのは1度しかなく、市政の現状課題や今後の展望などを争点に、毎回激しい選挙戦が展開されてきた。
 11月末時点の市内人口は3万1456人。昭和27年に盛町、大船渡町、末崎村、赤崎村、猪川村、立根村、日頃市村の2町5村が合併して誕生した昭和27年の人口(旧三陸町除く)3万1597人をすでに下回った。
 旧三陸町と合併した平成13年には4万人を超えていたが、年々減少が続く。近年は年間700~800人のペースで少なくなり、次任期中には人口3万人割れが予想される。
 平成以降で最大の延焼面積となった大規模林野火災からの復旧・復興はもちろん、住民福祉や産業振興、教育などの各分野で課題は多岐にわたる。人口減少下の中での活性化策をどう打ち出すかが注目される。
 今後、市選挙管理委員会で日程を決めるが、前回と同様に11月中の告示・投開票が予想される。今月1日現在、同市の有権者数は2万7660人(男1万3144人、女1万4516人)。前回選の投票当日有権者2万9301人と比べて、1641人少ない。