国を超え 防災意識を共有 陸前高田とインドネシア・アチェ州の高校生 避難や仮設住宅生活を学習 県の海外津波博物館交流で(別写真あり)

▲ インドネシア・アチェ州の高校生と高田高の生徒らが防災を通じて交流=6日

 県による令和7年度「海外津波博物館等との交流」は5、6の両日、陸前高田市内で開かれた。インドネシア共和国アチェ州の高校生やアチェ津波博物館などの関係者らが来日し、生徒らは県立高田高校(伊藤正則校長、生徒340人)の2年生9人とともに東日本大震災当時の避難や仮設住宅での生活などを学習。学びの成果を互いに発表し合い、国を超えて防災意識を共有した。(三浦佳恵)

 

 交流会は、大震災の事実と教訓の伝承・発信や国内外の防災力向上に貢献し、伝承や地域防災活動を担う人材の育成につなげようと令和4年度から毎年実施。東北大学災害科学国際研究所が協力している。
 これまでは、津波被害の経験がある岩手、アチェ州、アメリカ合衆国ハワイ州の高校生や博物館の関係者らが参加し、自国での防災、津波伝承の取り組みなどを共有してきた。今回は、交流開始後初めて気仙の高校生が参加し、アチェ州のバンダ・アチェ第一高校の生徒とともに交流を図ることとなった。
 高田高からは、探究活動「T×ACTION PROJECT(タクションプロジェクト)」の防災チームに所属する2年生9人が参加。バンダ・アチェ高校からは2、3年生の4人が来市した。
 アチェの生徒らは5日午後に陸前高田入りし、高田高で生徒たちと顔合わせ後、市コミュニティホールでは市職員から避難所開設時の対応や必要な施設、物資などを学んだ。米崎町の3・11仮設住宅体験館では、ポリ袋クッキングによる夕食作りと会食で防災の知恵を身に付け、宿泊をして仮設住宅での生活を体験した。
 2日目は、パークガイドの案内で気仙町の高田松原津波復興祈念公園を見学。旧タピック45の内部や防潮堤などを巡り、震災犠牲者らに黙とうをささげた。
 その後、生徒たちは高田高で2日間の交流内容をまとめ、東日本大震災津波伝承館の早坂寛副館長、アチェ津波博物館のムザイリン・アファン顧問、ハワイ太平洋津波博物館のシンシア・キャロル・プレラー館長(オンライン出席)らを前に発表した。
 アチェの生徒たちは、仮設住宅や復興祈念公園での経験を挙げ、高田松原の美しさなどにも言及。高田高の生徒たちとの新たな縁に喜び、「これから自分の国で、この経験を伝えたい」と誓いを込めた。
 高田高の生徒らも、2日間の貴重な体験や新たな発見を振り返り、「アチェの方々と交流し、互いの防災意識を高めることができた」と成果を示した。先月下旬、インドネシアのスマトラ島で発生した大規模洪水にも触れ、「大変なときに来てくれてありがとう」と被災地にも心を寄せた。
 バンダ・アチェ第一高のトゥク・ブナイヤ・キラム・アズキアさん(3年)は「交流はとても素晴らしく、陸前高田の津波関係の防災をいろいろ学べた。学んだことを全て役立てたいが、特に避難訓練はこちらでは毎年何回もやっている。アチェでも回数が増えればいいと思う」と語った。
 高田高の泉田昊望さんは「最初は緊張して、会話も難しいと感じたが、言葉が通じなくてもアチェの皆さんは優しく話をしてくれた。防災についても初めて知ったことがあり、勉強になった。いつかインドネシアを訪ねられたら」と話し、交流継続に期待を寄せた。