まちの〝宝〟後世へ 町指定文化財に3件追加 紺紙金字一切経や郷土芸能
令和7年12月9日付 7面
住田町内の民家で発見された中尊寺の国宝「紺紙金字一切経」の一部とみられる経巻と町内の二つの郷土芸能が、新たに町指定文化財に追加された。文化財調査委員会と教育委員会定例会での審議を経て、今月2日に告示された。町教委では指定した3件をまちの〝宝〟として、後世に残していくための発信にも力を入れていく。(清水辰彦)
無形民俗文化財となった「柿内沢鹿踊」
新たに指定されたのは、有形文化財として中尊寺経の一部とみられる「紺紙金字一切経」、無形民俗文化財として世田米地区の「行山流山口派柿内沢鹿踊」、五葉地区の「五葉念仏剣舞」の計3件。
11月に文化財調査委員会が開かれ、いずれも町指定とすることが承認され、同委員の推薦を受けて教育委員会定例会に諮り、可決された。
中尊寺経は、平安時代後期の東北地方で勢力を誇った藤原清衡・基衡・秀衡の3代によって同寺に奉納された仏教経典の書写の通称。このうち、秀衡が奉納したとされる、紺色に染めた紙に金泥で経典を書写したものが「紺紙金字一切経」。奉納された約5300巻のうち、中尊寺に残っているのは2800巻ほどで、そのすべてが一括して国宝に指定されている。
公益財団法人県文化振興事業団の羽柴直人上席専門学芸員による調査で、町内で発見された経巻は「紺紙金字一切経の内の一巻である可能性が非常に高い」と結論づけられた。これにより、信頼性と価値が高く評価されたとして、調査委員の推薦を得た。
発見からこれまで、町内で公開された際には多くの町民らが展示会場に訪れており、町内でも関心が高まっている。
一方、柿内沢鹿踊は、寛政年間(1789~1801)の初めごろ、矢作村(現・陸前高田市矢作町)馬越で伝授された人物が柿内沢地域で広めたのが由来とされている。
五葉念仏剣舞は、紺野八太郎という人物を元祖としており、昭和33年に後継者不在で一時は途絶えるも、同60年に復活した。
両芸能とも、保存会が精力的に活動を継続。歌詞は町史に、踊りの様子は町郷土芸能団体連絡協議会が作成した保存動画に記録されており、「指定時の文化財の状態を恒久的に維持する準備ができている。町指定無形民俗文化財としてふさわしい」と、調査委員から判断された。
町指定となるのは、有形文化財が令和4年以来、無形民俗文化財が平成7年以来。町教委の松高正俊教育長は「町の財産が公的に認められてうれしく思う。三つとも素晴らしい財産なので、広くいろんな方々に知っていただくため、周知を図っていきたい」と話している。






