県人初の最優秀賞に輝く 全国高校生創作コンテスト短編小説の部 大船渡高2年の下村桜子さん

▲ 全国高校生創作コンテスト短編小説の部で県人初の最優秀賞に輝いた大船渡高の下村さん

 高校生が短編小説、現代詩、短歌、俳句の作品で実力を競う「全国高校生創作コンテスト2025」(國學院大學、高校生新聞社主催)の短編小説の部で、県立大船渡高校の下村桜子さん(2年)の作品『潮の香るベンチで水平線を書く』が最優秀賞を獲得した。抽象的な表現をうまく用いて、読み手の想像力をかき立て、解釈を〝預ける〟作風で、県人として初の最高賞を受賞。下村さんは、表彰に照れた様子を見せながら「別のジャンルの小説にも挑戦してみたい」と意欲を見せている。(菅野弘大)

 本年度で29回目を迎えた同コンテストは、全国の高校生が短編小説、現代詩、短歌、俳句の4部門で創作力を競うもの。下村さんが応募した短編小説の部には、782作品が出品され、著名な作家や詩人、歌人、俳人らが厳正な審査を行った。
 下村さんの作品は、海が見えるベンチに座った主人公と老人が会話をする様子が描かれている。水平線が見える風景、海から聞こえる汽笛の音、老人がたどってきた人生の歩み、老人の話を聞いた主人公の心情の動きなど、一つ一つの文章を抽象的に表現することで、読み手の経験や解釈によって幾通りの情景、イメージが浮かぶような物語になっている。
 原稿執筆に当たり「事実は解釈である」と自身でテーマを設定。「物語の〝答え〟を一つに決めるのではなく、読んだ人それぞれの解釈で変わっていく作品になればいいと思った」と意図を語り、休日や学校から帰った夜の時間を使って、原稿用紙約8枚分をパソコンで書き上げた。自身や父も愛読する小説家・中村航さんからの講評も喜び、「自分の考えが人に伝わる恥ずかしさも感じているが、自分が書いた作品の考えや、そこに込めた思いが誰かの心に届いて、評価されたことがうれしい」と充実した笑顔を見せた。
 昔から読書や作文が好きだったという下村さん。高校1年から担任を務める髙鷹義之教諭(48)の勧めで、部活動や学業のかたわら、これまでに約10作品の小説を書き、コンクールなどに応募してきた。
 最優秀賞を獲得した今作品について、髙鷹教諭は「抽象的、比喩表現が多いのに、情景ははっきりと頭の中に浮かぶ。読み手に〝預ける〟という、下村さんの感覚、感性など、〝らしさ〟が爆発した作品になっている」と絶賛した。
 この受賞を機に、ジャンルの違う小説の原稿執筆にもさらなる意欲を見せる下村さん。「今度はSF小説にも挑戦してみたい」と語り、「今回の作品を、たくさんの人に読んでもらえたらうれしい」と期待を込める。「将来は、本や出版などの書籍に携わる仕事をしたい」と思い描き、夢はまだ漠然としているが「大学では文学部に入って知識を深め、将来の進路選択につなげたい」と見据える。
 下村さんの作品は、高校生新聞オンラインサイトで読むことができる。