気仙2学科の存続など要望 高校再編計画の修正案巡り意見交換 沿岸南部の首長・団体代表ら 陸前高田で県教委の地域検討会議
令和7年12月16日付 1面
県教育委員会による「今後の県立高校に関する地域検討会議」は15日、陸前高田市高田町の市コミュニティホールで開かれた。気仙3市町と釜石市、大槌町からなる沿岸南部地区の首長や教育長、各種団体代表者らが出席し、先月に県教委が公表した「第3期県立高等学校再編計画(当初案)」を巡って意見を交換。修正案では、高田・海洋システム科(定員40人)を令和10年度、大船渡東・食物文化科(同)を12年度に募集停止とする方向性が示された中、気仙の出席者は両科の存続などを求めた。(三浦佳恵)
地域検討会議は、各地区における高校のあるべき姿や地域の実情に応じた高校、学科の配置などについて、代表者らと意見を交わそうと開催。本年度3回目となり、陸前高田市の佐々木拓市長、大船渡市の渕上清市長、住田町の小向正悟副町長ら21人が出席した。
冒頭、県教委事務局の松村達局長は「修正案は地域の声を反映し、今後も地域の実情を踏まえながら質の高い教育をしていくことができるようにしたもの。皆さんから意見、提言を聞き、さらに計画の内容を充実させていきたい」とあいさつ。事務局側が修正案の概要を説明した。
第3期県立高校再編計画においては、8月公表の当初案で高田・海洋システムと大船渡東・食物文化を10年度に募集停止とし、海洋システムと食物文化の調理師養成施設を宮古水産に集約する方向性を提示。食物文化の家庭の学びは、大船渡東・農芸科学でコースなどとして維持するとした。
その後修正案を示したが、食物文化の募集停止時期が12年度に先送りとなった以外は、当初案と変わりなかった。
県教委はこの内容に至った理由として、集約先となる宮古水産・宮古商工の校舎一体整備の時期が9年度から10年度に延び、水産の学びと調理師養成施設の集約時期を分散させることにしたと説明。また、食物文化は農芸科学で家庭の学びを維持するため、教育課程を検討する時間が必要なことも挙げている。
出席者らは、1人ずつ発言。このうち、佐々木市長は「海洋システム科は教員の確保が難しいという話だが、産業に関係する学科は、生徒の希望や地域の需要などを十分考慮すべき。大人の都合で学科をなくすのではなく、〝生徒ファースト〟でもう少し時間をかけ、真剣に検討してほしい」と迫った。
渕上市長は食物文化科について、「私自身も、当市としても、現状で残してほしいということに変わりはない」と述べ、再編計画を生徒目線で見直すよう要望。宮古水産・宮古商工の校舎整備費用が資材や人件費の高騰などを受けて膨らむ中で、比較的新しい東高校舎の活用も求めた。
小向副町長は、「計画では、状況や情勢の変化において修正もあり得るという担保がだいたいなされるものだが、残念ながら、この再編計画にはそういう担保がない。今後もいろいろ議論し、情勢や状況を見守りながら、修正もあり得るという担保がある計画であってほしい」と注文した。
気仙の出席者らは、海洋システム、食物文化、今回は再編対象外だった住田の存続を要望。このほか、全体の意見交換を通じては「教職員の育成が必要」「リモートを活用するなどし、学びの環境を整えて」「当事者の子どもたちがいいと思えるものにしてほしい」などの声が寄せられた。
県教委は、募集停止後の水産の学びについて、「高田高の探究活動で水産に関する研究に取り組んだり、インターンシップで漁業に関わる仕事を体験するなど、地域と連携して学びを維持するのは可能」と説明。家庭に関しては「農業の中に、家庭の学びを取り入れている高校もある。これまで地元の方々と行ってきた商品開発などの取り組みは、食物文化がなくなったとしても引き続きできる。学びを残すよう教育課程、カリキュラムを検討していく」と理解を求めた。
修正案を巡っては、この日夜、大船渡市盛町のシーパル大船渡で地域住民向けの意見交換会も開かれた。






