「福祉の里」今後に関心 県公表の公共施設等総合管理計画最終案巡り 市当局は災害時拠点の重要性も強調

▲ 平成4年に開設された県立福祉の里センター

 県が先月示した令和7~16年度を期間とする「第2期公共施設等総合管理計画」の最終案を巡り、大船渡市内で波紋が広がっている。17日の市議会一般質問でも、複数議員が取り上げた。立根町の県立福祉の里センターは、機能の廃止を見据えて売却・移管する方向性が盛り込まれたが、市側は福祉分野だけでなく避難所利用など災害時拠点としての重要性も強調。福祉の里を形成する施設の多くは整備から30年以上が経過しており、老朽化や設備の不具合も出ている中、今後は再編や各施設のあり方への関心がより高まりそうだ。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやりとり)


 最終案によると、本年度から30年間に全ての県有施設を維持・更新する場合、経費見込みは総額で2兆円余りと試算。案には、コスト縮減や施設規模・配置・機能等の適正化などを図る内容が盛り込まれ、県議会で示した参考資料には気仙の3施設を含む67施設の先行評価と今後の方向性をたたき台として提示した。
 大船渡市では、福祉の里センターについて機能の廃止を見据えて売却・移管する方向性、同市三陸町の大窪山森林公園は県民の森(八幡平市)への集約化を前提に解体とする内容が示され、地域も交えて今後のあり方を検討する。陸前高田市の県立野外活動センターは現状を維持し、ほかの県内青少年の家との複合化・集約化を推進する。
 福祉の里センターは、県民の福祉意識高揚などを目的に県が平成4年に設置。研修のほか、宿泊・保養、ホールや会議室等の施設利用を主な事業としている。
 大窪山森林公園は、同12年に開園。県ホームページによると、区域はなだらかな斜面一帯の577㌶で、園内には「もりの学び舎」を整備。野鳥等観察舎やあずまや、散策路、樹木展示林もある。
 両施設に関しては、一般質問で熊谷昭浩議員(新政同友会)と小松則也議員(同)が取り上げた。熊谷議員は、同センターについて「福祉の里の中核施設として重要な役割を果たしている。これまで以上に県と連携し、機能の充実・強化が図られるように取り組みを進めていくことが必要」とし、当局の見解を求めた。
 藤原秀樹保健福祉部長は「(最終案では)理由など、詳細については公表されていない」としたものの、社会福祉従事者の研修の受け入れ先など、福祉のまちづくりに欠かせない施設との認識を示した。さらに「東日本大震災や市大規模林野火災時には、避難所として利用させていただくなど、災害時拠点としても有益施設」と語った。
 2月26日に発生した大規模林野火災では、発災翌日に赤崎町の蛸ノ浦地区全域に避難指示が拡大したことを受け、同センターにも避難所が開設された。さらに同町の避難指示対象が拡大すると、利用者は130人を超えた。
 入浴機能もあり、全域で避難指示が解除された後も、被災世帯向けに避難所利用が続いた。子どもがいる世帯や、早朝に仕事に出る避難者に配慮した部屋割りもでき、5月30日まで開設された。
 現在、同センターに隣接する形で市Y・Sセンターや民間社会福祉法人運営の特別養護老人ホーム、就労継続支援事業施設など10以上の施設・機関がある。さまざまな住民ニーズに応じた「福祉の里」を形成し、長年にわたり幅広い世代の市民らに親しまれてきた。
 一方、施設によっては老朽化による設備不具合も散見され、時代に合った対応を求める声も出ている。一般質問では、18日以降も福祉の里内の施設に関する問題を取り上げる通告があり、今後の議論の行方が注目される。
 小松議員は、大窪山森林公園を巡り論戦。「集約化されても、豊かな自然環境は残り、活用が期待される」とし、今後のあり方をただした。
 これに対し、佐藤雅基農林課長は「基本に基づき、今後10年間で県が個別にどう方針を示すかを見守る必要がある。県の考えに基づき、市として活用できる部分があれば検討すべきと考える」と答えた。