師走彩るあめ色の輝き あす冬至 伝統つなぐ干鮑作り

▲ 青空の下で行われる干鮑作り

 20日の気仙地方は、すっきりとした青空に恵まれた。大船渡市三陸町内の加工場では、糸につるされた干鮑がずらりと並ぶ光景が広がった。明るい日差しの下で寒風と乾いた空気にさらされ、うま味が増す。受け継がれてきた伝統技術が、冬に彩りを添えている。
 干鮑は中華料理の高級食材で、特に県産のものは品質の良さなどから海外でも高い知名度を誇る。古くから重宝され、交易を支えてきた。もっちりとしたやわらかな食感や、深みのある味わいが広がる。
 水揚げされたアワビの身を塩水に漬け、ゆでたあとに炭火でいぶし、糸を通してつなぎ、屋外に並べる。太陽の光を浴びると、あめ色に輝き、独特の香ばしさが広がる。こうした〝干鮑のれん〟の光景は3月ごろまで続き、香港向けなどに出荷される。
 この日の大船渡の最高気温は14・6度(平年比7・8度高め)まで上昇。二十四節気の一つ「冬至」を22日に控えるが、春を思わせる暖かさとなった。
 三陸町内は今年、大規模林野火災をはじめ激動の一年となったが、昔から変わらない光景が師走に彩りを添える。近年は冷蔵・冷凍技術が発達したほか、アワビ収量減の影響を受けるなど干鮑作りの厳しさが増している中にあっても、作業にあたる一人は「伝統を守っていかなければ」と力を込める。