2025気仙この一年/記者の取材ノートより③産業 サンマ水揚げ令和最多に 吉浜太陽光発電は突然の終止符
令和7年12月25日付 1面
サンマは数量回復 秋サケは過去最低
大船渡市魚市場を拠点とする今季のサンマ漁は、8月29日から今月8日まで水揚げが行われ、数量は8436㌧(前年同期比2786㌧増)と令和に入ってから最多となった。漁期序盤から全国的に好調なペースでの水揚げが続き、地元の大型船団を中心に数量を積み重ねた。漁場の形成位置などの関係で、10年連続だった水揚げ本州一の座は気仙沼に譲ったものとみられるが、来年以降につながる漁獲回復の兆しを見せた。
一方で、秋サケは今季も不漁。全県的に漁獲が減少しており、今月10日時点の市魚市場への水揚げは、前年同期比72・8%減の182匹と低調な動きとなっている。
県全体の沿岸・河川累計捕獲数も1万3046匹と、前年同期から6割減。過去最低に終わった昨年をさらに下回る壊滅的な様相を呈している。
気象庁は8月、黒潮大蛇行の終息を発表。近年は、黒潮続流の北偏や地球温暖化の影響で、三陸沖でも海水温の高温化による漁獲魚種の変化、気仙では養殖業における貝類の成育不良、へい死などの被害に苦しんだ中、終息を契機とした漁況回復と環境改善に期待が高まる。
大窪山市有地での発電計画中止/大船渡
大船渡市三陸町吉浜地区の大窪山市有地などで大規模な太陽光発電事業を計画していた自然電力㈱が9月、同事業の継続中止を発表した。近年の人件費や資材費高騰など事業環境の厳しさに加え、8月に通知を受けた再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)事業計画認定の失効などが要因。平成25年から検討し、住民の賛否が分かれ注目を集めてきたが、市長の総合的判断を待たずに、終止符が打たれた。
敷地面積は約98㌶。パネル敷地面積は25・4㌶で、約7万6600枚を整備する計画だった。
県条例に基づく環境アセスメントの手続きを進めてきた中、市長が住民理解などを総合的に判断し、市有地の最終的な土地賃貸借可否を決める流れとなっていた。大窪山での別事業を考える方針はなく、事実上の撤退となった。
東日本大震災の被災跡地を大船渡市が産業用地として整備した三陸町越喜来沖田地内では5月、㈱いわて銀河農園による大規模なトマト生産技術高度化施設「越喜来農場」が完成。同社は末崎町の被災跡地にも設備を構え、2拠点体制によって同市は東北でも有数のトマト産地となった。
サーモン海面養殖事業本格化/陸前高田
水産大手㈱ニッスイのグループ会社が11月、陸前高田市広田町の広田湾でサーモン海面養殖事業に着手した。2年間の試験養殖を経て本格的な事業に移行し、令和12年の水揚げ量は、試験時の10倍以上となる2500㌧を計画している。
ニッスイは矢作町にある広田湾漁協所有のサケ・マスふ化施設を一部改修するなどして種苗生産施設も整備。11月には大船渡市三陸町越喜来でも越喜来漁協との共同で試験養殖を始めた。






