2025気仙この一年/記者の取材ノートより④教育 新生・大船渡中が開校 県立高2校2学科に募集停止案

▲ 生徒や教職員、地域住民らが出席して行われた新生・大船渡中の開校式(4月4日)

大船渡、末崎両中が閉校、統合

 

 大船渡市で4月、大船渡町の大船渡中学校と末崎町の末崎中学校が統合し、新生・大船渡中が開校。市が策定した市立小・中学校適正規模・適正配置基本計画に基づくもので、校舎は大船渡中、校章は末崎中のものを使用し、新校歌は末崎町出身のシンガーソングライター・濱守栄子さんが制作した。
 校訓は、両校の「黒潮魂」「末中魂」を受け継ぐ「心」。旧大船渡中の郷土芸能発表や旧末崎中のワカメ学習など、形を変えながら伝統を引き継いでいる。
 両校はともに昭和22年に開校。地域とともに、古里の特色を生かした学びを展開した。3月に各校で閉校式が行われ、ともに78年という長い校史に幕を下ろした。


高校再編計画案受け存続要望

 

 県教育委員会は8月、令和8年度から10年間を期間とする「第3期県立高等学校再編計画」の当初案を公表。気仙では、10年度に高田の海洋システム科(定員40人)と大船渡東の食物文化科(同)を募集停止としたうえで、海洋システムと食物文化の調理師養成施設機能を宮古水産に集約し、同科の家庭の学びは東高の農芸科学科で維持する方向性を示した。
 近年の入学者の状況や、水産、調理師養成の専門教員が少なく、確保が難しくなっていることが主な理由。いずれの科も地域と連携した学びに取り組んでおり、地元からは地域産業の振興や担い手育成などの観点から両科の存続を求める声が上がった。
 気仙3市町と釜石市、大槌町からなる沿岸南部地区の5市町は10月、県教委に両科の存続と同地区に医療人材育成(医学部等進学)コースの設置を求める要望書を提出。大船渡、陸前高田の両市議会も県教委などに意見書を出し、両科の存続を求めた。
 大船渡市内の各種団体や市民有志からなる「大船渡東高校・食物文化科をみんなで護る会」(代表・米谷春夫大船渡商工会議所会頭)は、同科の存続を求める署名1万4719筆を集め、11月に県知事と県教育長に届けた。
 同月中旬には、計画の修正案が示された。食物文化の募集停止時期が10年度から12年度に先送りされたほかは当初案と変わらず、今後は生徒数の増加等を目指し、地域を挙げて各高校の魅力化に取り組んでいくことなどが求められる。


国宝級の経巻など文化財指定/住田

 

 住田町内の民家で発見された中尊寺の国宝「紺紙金字一切経」の一部とみられる経巻と、世田米地区の「行山流山口派柿内沢鹿踊」、五葉地区の「五葉念仏剣舞」がそれぞれ、今月2日付で町の文化財に指定された。
 11月に文化財調査委員会が開かれ、いずれも町指定とすることを承認。同委員の推薦を受けて教育委員会定例会に諮り、可決された。
 このうち、紺紙金字一切経は、平安時代後期の東北地方で勢力を誇った藤原秀衡によって同寺に奉納された仏教経典の書写。見つかった経巻はその一部である可能性が高く、〝国宝級〟とされている。
 町教委では指定した3件をまちの〝宝〟として、後世に残していくための発信にも力を入れていく。