「旧吉田家住宅主屋」を追加 震災伝承施設に登録 被災状況、復旧の経過伝える

▲ 第3分類の震災伝承施設に登録された旧吉田家住宅主屋

 東北地方整備局や岩手県、復興庁などで構成する震災伝承ネットワーク協議会は、東日本大震災の実情や教訓を伝承する「震災伝承施設」に、陸前高田市気仙町の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」を追加登録した。「震災を伝承し、訪問と理解がしやすい施設」と位置付ける第3分類としての登録で、建物に被災部材を用いて復旧し、主屋内では震災の被災状況や復旧の経過を伝えていることなどが認められた。気仙の追加登録は昨年8月以来で、累計58件となった。

 同協議会は、青森、岩手、宮城、福島各県における震災伝承をより効果的・効率的に行うためのネットワーク化に向けて連携し、交流促進や地域創生、防災力の強化を図ろうと活動。震災伝承施設の登録制度は、被災4県から震災遺構、震災復興伝承館、記念碑、慰霊碑などを公募して進めている。
 登録条件は▽災害の教訓が理解できる▽災害時の防災に貢献できる▽災害の恐怖や自然の畏怖を理解できる▽災害における歴史的・学術的価値がある──などのいずれかに該当する施設。これに、十分な駐車スペースや展示内容の多言語化、展示物などの案内人、語り部活動の有無なども確認したうえで、第1分類(震災伝承施設)、第2分類(震災を伝承し、訪問しやすい)、第3分類に分けて登録している。
 新たな施設登録は今月3日付で決定したもので、対象は旧吉田家住宅主屋のみ。吉田家は、江戸時代に仙台藩気仙郡(陸前高田市、住田町、大船渡市、釡石市唐丹)の24カ村を統治する「大肝入(地方役人における最上位の職)」を代々世襲しており、主屋は享和2(1802)年に建設。藩政期における気仙郡の政治拠点や宿所として利用され、県指定有形文化財にも指定されていた。
 しかし、震災の津波によって全壊。関係者や地域住民らが自主的に回収した部材を生かしながら市が復旧事業を行い、今年3月に完成、5月に開館した。
 建物の至るところに被災部材を用いた主屋内では、震災の被災状況や復旧の経過などをパネルにして展示。世界的に見ても、極めてまれな復旧事業を体感できる施設となっている。
 管理棟では、被災前の街並みの様子や復旧に使用した大工道具などを並べ、復旧の経過を映像で紹介。45台分の駐車場も設けている。こうした施設の特徴から、第3分類の震災伝承施設に登録された。
 今回を含め県内の総登録施設数は131件。青森、宮城、福島も合わせた施設総数は347件となった。

 

新年に向けて神棚の設置も

 

旧吉田家住宅主屋では新年に向けて神棚を設置

 同住宅主屋では26日、新年に向けて神棚を設置する作業が行われた。震災以前の主屋と同様の場所にまつられることとなり、内部もかつての姿に着々と近づいている。
 神棚は、同住宅が5月の開館後、初めての新年を迎えるにあたって設置されたもので、これまで外構などの復旧業務を請け負ってきた市建設業協会が作業を行った。
 震災以前も神棚が設置されていた居間では、約2㍍の高さの棚に神具がそろえられたほか、同住宅そばに鎮座する諏訪神社のお札などがまつられた。
 このほか、主屋入口には地元のマツの葉で飾ったしめ縄を設置したほか、東側の門に門松を置くなど正月準備が進められた。建設業協会の業者らは、神様の通り道の確保にも意識を払い作業を行った。
 同住宅は来年4月1日から、市外の大人を対象に見学が有料となる。市教委の担当者は「展示やガイドなど、サービスのさらなる充実に努める。今後、イベントや結婚式の会場としても活用してもらえたら」と話す。
 同住宅の年末年始休館は、29日(月)から1月5日(月)まで。