ビール通じて交流創出を 三陸ブルーイング・カンパニー キャッセン内に店舗オープン

▲ オープンを迎えた三陸ブルーイング・カンパニーのタップルーム。さまざまなビールを楽しむことができる

 大船渡市大船渡町の商業施設「キャッセン大船渡」内に27日、三陸沿岸の原料を使ったクラフトビール「三陸ビール」の製造・販売などを手がける同市の「三陸ブルーイング・カンパニー合同会社」(南忠佑代表)のタップルーム(飲食スペース)がオープンした。来年からは自社での醸造開始を見込んでおり、大船渡でのクラフトビール文化醸成、ビールを通じた気仙内外の住民の交流創出を目指す。(清水辰彦)

 

 南代表(48)は東京都内の企業に勤める傍ら、趣味で醸造所に通って勉強を重ねていた。妻の佳代子さんが大船渡町出身という縁で頻繁に気仙に通う中、ビールの副原料として魅力的なものが数多くあることに気づき、平成30年に同社を設立。委託醸造で三陸の素材を使ったビールの製造を行い、三陸沿岸を中心に盛岡市や仙台市、首都圏へ販路を広げてきた。
 会社設立当初から、「いつか大船渡に醸造所を」という思いを持っており、各地で物件を探す中、キャッセン内に構えていた衣料品店が今年2月に閉店したことを受け、念願の開業に至った。
 20平方㍍のテナントの大部分が「製造工場」となり、5分の1ほどのスペースに「タップルーム」を設けている。
 タップルームには、ビールの注ぎ口「タップ」10個を常設。現在、同社がメインで販売している、気仙のツバキを使った「週末のうみねこ」、陸前高田市の北限のゆずを原料に加えた「恋するセゾン」、宮城県登米産のブランド米を用いた「伊達男IPA」の3種類に加え、東北をはじめ全国各地のビールを提供。三陸の旬の魚介を使った料理とビールの組み合わせを楽しむことができる。
 扉や窓枠には、県産の樹齢400年以上の天然杉など木材を使用。木のぬくもりを感じられる内装に仕上げ、店舗外壁には三陸の自然をイメージしたペイントが施されている。
 店内はカウンター、テーブル合わせて12席。営業時間は平日が午後5時~10時、土・日曜日、祝日が午後1時~10時。定休は月曜日。年内は28日まで営業する。
 26日のプレオープンも関係者らでにぎわいをみせ、オープン初日も多くの人が立ち寄った。
 南代表は「ようやくこの日を迎えられてほっとしているが、ここからがスタート。大船渡、陸前高田、住田の方々をはじめ、遠方からも足を運んでいただき、地元内外の人が交わる〝交差点〟のような場所にしていきたい」と意欲を見せている。
 醸造開始は1、2月ごろを予定。これまでの委託醸造は年間製造量が3万㍑ほどだったが、醸造所オープン後は10万㍑の製造を目指す。ラインナップ増加、地元限定ビールの開発も視野に入れる。
 同社では29日(月)まで、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」で醸造設備導入にかかる資金の一部を募っている。目標金額は500万円。リターンとして、完成後に使用できるビールチケットや限定グッズを用意している。27日午後4時現在の支援総額は471万円となっている。