岐路に立つ朗読ボランティア つばきの会 会員高齢化で「もう限界」(別写真あり)
令和8年1月23日付 1面
陸前高田市の広報などを読み上げて録音し、視覚障害者らに情報を届ける活動を継続している、同市の朗読ボランティア「つばきの会」(後川安希子会長、会員10人)。発足から30年余りが過ぎた中、会員の高齢化が進み、活動継続が困難な状況に追い込まれている。岐路に立つ会員らは、「声の広報を必要としている人がいる」と使命感を持ち続けながらも、先行きの不透明さに「私たちだけではもう限界」と苦悩も口にする。(阿部仁志)
同会では月2回の活動日を設定。今月15日には、午前9時に竹駒町の竹駒地区コミュニティセンター敷地内にあるログハウス(旧仮設市立図書館)に会員8人が集まり、最新版の「広報りくぜんたかた」と「りくぜんたかた市議会だより」、「社協だより」の朗読に臨んだ。
録音作業では、機器を操作する担当者が話し手にスタート・ストップを指示し、読み間違いや異音が入ったときなどは再録音。パソコン画面に映る音声波形を見つめ、正常に録音されているか細かく確かめた。朗読の順番を待つ会員は、2倍に拡大コピーされた広報紙を広げ、誤りがないか一字一句チェックした。
「広報りくぜんたかた」と「市議会だより」はそれぞれ、約80分のデータを書き込めるCDを2枚使用。「社協だより」も含め、声の広報の現利用者7人分や公共施設に配る分を完成させ、会員たちは午後8時すぎに帰路に就いた。
会員の年齢は60~80代。活動拠点から離れた広田町や小友町から通う人もいる。移動は、自家用車での乗り合わせや公共交通などでやりくりしてきたが、最近は高齢化で免許を返納する会員もおり、バスの便数の少なさや、かさむ交通費も、円滑な活動への足かせとなっている。
毎年開く「市長と語る会」で市に現状を伝え、若手のボランティア育成や活動費支援、環境改善の必要性を訴えてきた。市内行事を通じ、朗読ボランティアの活動をPRする試みも行ってきたが、事態が好転するような手応えは得られなかった。
「私たちがいなくなれば、声の広報はなくなってしまう。誰が目の不自由な人たちに地域の情報を届けるのか」──。声の広報は利用者に喜ばれ、「陸前高田に必要なこと」とやりがいも感じているからこそ続いてきたボランティア活動だが、先が見えない不安に、発足当初からのメンバーでもある後川会長(78)は「いつまで続けられるか」と声を落とす。
同会は、市民から朗読ボランティアの要望を受けた市が企画、募集を行い、趣旨に賛同した市民有志5人で平成6年11月に発足。7年2月には、市の広報を朗読してカセットテープに録音し、初めて「声の広報」として発行した。
その後も仲間を増やしながら、毎月の録音と発行、利用者との交流を継続。市以外にも、市議会や福祉関係の広報朗読の依頼に応じ、「聞きやすく内容の伝わる朗読」のノウハウを蓄積してきた。声の広報は、視覚障害者ら利用者の情報源として浸透し、重宝された。
平成23年3月の東日本大震災では、機材や活動記録などを流失し、会員4人が犠牲となった。残された会員らは、厳しい環境の中でも「困難な状況に置かれた利用者が待っている」と、同年6月から録音を再開。コロナ禍のさなかも休まずに声の広報を届け続けてきた。
令和6年11月で発足30年の節目を迎えた同会は、今月22日に、高田町のキャピタルホテル1000で祝う会を開催。会員や声の広報の利用者、市の元広報関係者ら22人が出席し、歩みを振り返った。
元会員の小野寺彦宏さん(91)=高田町=は、利用者と一緒に五葉山登山をして親睦を深めた思い出を振り返り、「つばきの会は、ただ情報を伝えるだけではなく、視覚障害のある人たちと社会をつなぐ役割も担ってきた。声の広報を聞き続ける人がいる限り、活動を続けていただきたい」と願った。
利用者を代表し、祝辞を述べた熊谷賢一さん(61)=竹駒町=は「(30年前に)初めて声の広報を聞いたとき、〝陸前高田市民になった〟と思うことができ、ほっとしたのを覚えている。つばきの会は、目の見えない私たちにいろんな世界を見せてくれた大切なグループ。高齢化が進む中、私も、皆さんの支えになることを考えていきたい」と最大限の感謝を伝えていた。
気仙ではつばきの会以外にも、高齢化、担い手不足に悩むボランティア団体が存在する。後川会長は「どこの団体にも共通すると思うが、活動を若い人に知ってもらうこと、体験できる機会を増やすことが、継続のために大事なことだと思う」と考えを巡らせる。
「1人でも2人でも、広報を聞いてくださる人がいるのなら、活動を続けていきたい。また、つばきの会にこだわらなくてもいい。次世代による、朗読ボランティアの新しい組織が出てくれば、私たちも後押ししたい」──30年余の積み重ねが消えてしまわぬよう、会員らは声を振り絞る。






