インタビュー気仙2026⑧/組合員のなりわい再生第一に 綾里漁業協同組合代表理事組合長・和田豊太郎さん(75)
令和8年1月31日付 7面
──大船渡市大規模林野火災で地域が被災し、水産業、組合としても大きな被害を受けた。産業面での復興や組合員への支援に取り組んできたこの一年を振り返っての所感は。
和田 被災にかかる復旧・復興事業については、「まだか、まだか」と進捗がもどかしい部分はあったが、時間の経過は早いと感じる。家を失った人、漁業倉庫、漁具を失った人がいる中で、組合として組合員のなりわいの再生を第一に取り組んできた。一番懸念していたのは、漁師として生活をしてきた人たちが漁業を諦めてしまうこと。支援などで漁具や倉庫が復旧し、仕事ができる状況になりつつある一方で、自宅再建のめどが立たない人もいる。幸いにもほとんどの被災組合員が仕事への意欲を見せてくれていて、そこはまず良かったと思っている。
──組合経営の柱である定置漁業は、2カ統分の網と作業保管施設が焼損し、昨年は借り受けた網で操業を行った。復旧状況と今後の漁の見通しは。
和田 例年は5月の連休明けから水揚げを始めるが、火災の影響で遅れた。それでも、関係者の支援、協力で網を借りることができ、大入漁場は6月から、願松漁場は8月から水揚げを再開できた。例年より遅れてのスタートとなった分、漁況は特にもワラサなどブリ類が不足しており、物足りない実績だった。もう少し早く操業できていれば、浜が良い時に水揚げできたが、そこは仕方ない。
今年は新しい網を入れて操業する予定で、例年通りの開始時期に間に合うように3月中には発注をかけたい。資材の整備にかかり、これから支払いをしていかなければならない実情もある。トラブルなく漁、水揚げが続くことを願う。
──現場では、今月からワカメの早採り(間引き)も始まっている。組合員に対する支援の状況は。
和田 ワカメはボイル、塩蔵などの加工設備が焼失し、昨年は生での出荷を余儀なくされた組合員もいたが、今年は設備がそろい、ほとんどの人が通常通り作業できそうだ。昨年のウニ漁は、組合独自にさおやスラスター(推進装置)などを支援、整備し、開口にこぎ着けた。このほかに、個人で刺し網、かご漁を行う人にも漁具を発注、供給し、ある程度は本年度内に完了する見込み。プレハブの倉庫も、個人の希望で大きさを選んでもらい、引き渡しを済ませている。
──昨年8月に気象庁が「黒潮大蛇行の終息」を発表した。三陸沖でも漁獲魚種の変化や不漁、海水温の上昇などに苦慮してきたが、現在の海の状況をどのように見ているか。
和田 大蛇行が収まり、海流が変化したことによって、今年は水温が7~9度台まで下がり、ワカメの成育も順調に推移している。2、3月の低気圧被害がなければ、例年通りの生産量になるのではないか。一方で、冬のマダラはまだまだ少なく、スケトウダラは来る年と来ない年がはっきりしている。サケマス類は依然として回復する見込みがなく、マイワシもまだ金華山沖を越えて北上してこない。養殖のホタテは、全国的に疲弊しているところで、綾里ブランドの恋し浜ホタテも死滅が出なければいい。
春のワカメと定置網の出だしが重要で、春漁が良ければ一息つける。5~7月にサバでもサワラでもブリでも、季節の魚がしっかりと入ってきてくれれば。
──自身は大船渡市水産振興連絡会長も務める。1次産業は衰退や後継者問題も叫ばれる中、漁業に取り組むうえでどのような意識が必要か。
和田 長年、漁師たちは食べるのに困らないよう、漁船漁業でも養殖漁業でも、複数の種類を漁獲、養殖することで生き残ってきた。一番の理想は自分で育てる管理型の養殖漁業だが、「刺し網+かご網」「イカ釣り+イサダ」といった〝二段構え〟で仕事をすることが、生活を安定させることにつながるのではないか。これは漁家ごとに考えがあり、組合からあれこれ指示することはないが、組合員のためにいつでも相談に乗りたい。
今年の干支は午。新しくする定置網の走りだしが良いものになり、全てがうまくいく一年にしたい。(聞き手・菅野弘大)=おわり






