綾里に教訓の伝承施設を 林野火災、地震、津波の記憶発信へ ㈱山海畑の阿部さん クラファンで支援、協力募る
令和8年2月6日付 7面
大船渡市大規模林野火災から今月で1年となるのを前に、大きな被害を受けた三陸町綾里地区で、林野火災の記憶と教訓を発信する伝承施設の開業プロジェクトが始動した。全国で多発している山火事の〝リアル〟と再発防止への知識、東日本大震災の被災経験から地震、津波の脅威を伝えるほか、みちのく潮風トレイルをはじめとする地域ツーリズムの拠点としての活用を見据える。3月2日(月)まで、開業資金をクラウドファンディング(CF)で募っており、協力を呼びかけている。(菅野弘大)
伝承施設となる綾里清水地内の建物
プロジェクトに取り組むのは、同市の㈱山海畑代表取締役の阿部正幸さん(43)=綾里在住。震災ボランティアがきっかけで本県を訪れ、令和元年に綾里へ移住。綾里漁協の通販サイト・綾里漁協オンラインや各種漁業体験プログラムの運営、『東北食べる通信』の3代目編集長なども務める。
林野火災発生に伴う避難指示解除後は、独自に避難施設を手配したり、「綾里ワカメ大作戦」と銘打ったワカメ収穫ボランティアの受け入れ、火災現場の視察、被災漁業者への義援金贈呈、火災の記録をまとめたアーカイブの公開などに取り組み、山火事の恐ろしさ、防災への教訓を絶え間なく発信し続けている。
伝承施設の開業は、火災の記憶が風化していく中で、被災した綾里に発信の拠点をつくることで「山火事被害の再発を少しでも防ぎたい」という思いから計画。市大規模林野火災の発生以降も、全国的に山火事が多発している現状を踏まえ「個人的な伝承活動で終わらせてはいけない」とプロジェクトを立ち上げた。
伝承施設では、大規模林野火災の被害状況、被害範囲のマップ、復興状況、山火事発生のメカニズム、未然防止策の呼びかけを、展示を通じて行う。発生当日の様子を伝えるドキュメンタリー映像や、被災者、消防関係者へのインタビュー映像も制作し、上映する。
「現地を訪れた人たちは全員『現地に来なければ何も分からなかった』と衝撃を受けていて、自分が思うよりも山火事の脅威が伝わっていないことを感じた。火災は鎮火して終わりと思う人も多いが、そうではない。特に森林再生には30〜40年かかる」とし「山火事は、気候変動によって発生リスクが高まっている。大船渡の火災を踏まえて創設された林野火災注意報・警報も運用されているが、まだまだ浸透していない。不注意で終わらせず、少雨による極度の乾燥、強風など、外で火を取り扱ってはいけない日がある、増えていることを知ってほしい」と訴える。
火災だけでなく、震災の被害と、被災経験を生かした地震、津波への備えについて伝えるコーナーも設ける予定。阿部さんは「南海トラフ地震は、今後30年以内の発生確率が80%とされており、震災から間もなく15年となるが、危機意識の風化を感じる。震災を知らない世代も増えている。度重なる津波と山火事被害を経験した綾里にこそ、伝承施設があるべきで、被害と脅威を伝え続ける場所にしたい。そうした意味でも、市民参加型のCFでやりたかった」と思いを語る。
このほかにも、多くの人が訪れる「みちのく潮風トレイル」や、綾里が誇る漁業、水産物に関する展示も描いており、地域のPR拠点としての役割も持たせる。
CFの目標額は150万円。建物は、綾里清水地内の元飲食店店舗を活用する。展示物制作にあたり、林野火災の写真、映像提供を呼びかけるほか、ライター、学生インターンも募集している。
支援は寄付DXシステム「コングラント」(https://congrant.com/project/yamaumihatake/21026)で受け付ける。詳細は㈱山海畑のホームページなどで確認できるほか、大船渡町のおおふなぽーとで今月13日(金)まで行われている展示企画「自分の命は自分で守る~防災の『自分ごと化』~と大船渡市大規模林野火災展」(NPO法人おはなしころりん主催)の一角でも紹介されている。





