丹精込めた手彫り作品 赤崎町の佐々木さん 西大念佛剣舞(奥州市)の面製作

▲ 手がけた面を菅原会長㊧に手渡す佐々木さん

 大船渡市赤崎町に構える「木ばくり工房」の佐々木淳一さん(67)が、奥州市衣川の川西地区に伝わる川西大念佛剣舞の面を製作した。ユネスコ無形文化遺産に登録され、国指定重要無形民俗文化財にも指定されている同剣舞。権現様の獅子頭や剣舞面、木彫置物のほか、師走時期には餅つき用の臼などを製作しているベテラン木工彫刻家の佐々木さんは、「貴重な経験をいただいた」と丹精込めて仕上げた作品を見つめた。
 川西大念佛剣舞の発祥は、およそ900年前といわれている。中尊寺を建立した奥州藤原氏の初代・清衡が、前九年・後三年合戦で命を落とした亡霊を成仏させようと祈りをささげたところ、釈迦の使いだという一匹の猿が姿を現し、念佛踊りで亡霊たちを極楽浄土へ導いたと伝わっている。その踊りをもとに家臣につくらせたものが川西大念佛剣舞で、清衡の平和への願いと浄土思想が色濃く表れている。
 毎年、中尊寺で行われる春の藤原まつり、大施餓鬼会、秋の藤原まつりで舞が奉納されるほか、各地で公演。令和5年には「風流踊」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録された。
 同剣舞保存会(菅原賢一会長)では踊り手の増加に伴って面を追加しようと考えていたところ、人づてに木ばくり工房を紹介され、一昨年ごろに話を持ちかけた。昨年、ポーラ伝統文化振興財団からの助成金交付が決定したことから正式に依頼した。
 佐々木さんは「ユネスコ無形文化遺産ということもあってプレッシャーもあったが、身に着けて舞うものなので使い勝手の良さなどを心がけながら、普段通りに作業を進めた」と振り返る。
 昨夏に依頼を受けて、半年ほどで六つの面を製作。既存の面を模したものを手がける依頼で、一つ一つの面が異なる表情、色使いとなっているため、「雰囲気を壊さず、かつ使い勝手がいいように」と、面を着けた際に視野が広くなるようになど見えない部分で細かな改良を加えながら、ノミと彫刻刀で丁寧に彫り進めた。
 今月10日には保存会の菅原会長(72)と庭元の佐藤円治さん(76)が佐々木さんの工房を訪問して面を受け取った。色合いや身に着けた時の視界などを確かめた菅原会長は「いいものを作っていただいた」と感謝した。佐々木さんは「こうしたものを彫る機会はなかなかない。貴重な経験に恵まれた」と話していた。(清水辰彦)