現職の佐々木氏 1期目任期残り1年 次期市長選「白紙」 今後の態度表明に注目

▲ 次の陸前高田市政のかじ取り役は誰が担うのか、今後の動向に注目が集まる

 陸前高田市の佐々木拓市長(62)は13日、1期目の任期満了まで残り1年となった。大手水産会社のグループ社によるサーモン養殖事業を呼び寄せた手腕や市民の声に寄り添う姿勢を評価する声がある一方で、大胆な選挙公約の実現可能性を疑問視する市民もいる。次期市長選について、佐々木市長は「白紙」と態度を明確にしておらず、ほかに立候補に向けた動きはない。次の4年を担うリーダーの座を狙い、誰が名乗りを上げるのか、今後の動向に注目が集まる。(高橋 信)

 

 佐々木市長は10日、東海新報社の取材に応じた。「濃密な3年間だった。市民の安全を守るための緊張感のある対応もあった。市民、職員、関係者に支えていただいた」と振り返った。
 ㈱ニッスイ(本社・東京都)のグループ会社が昨年11月、サーモン海面養殖に乗り出したことに触れ、「今ある陸前高田の漁業を欧米並みの先端的で、憧れるような産業に発展させる可能性がニッスイのおかげでできた。水産業と大学などの研究機関が連携し、技術革新するようなことにもつながればさらに夢が広がる」と期待を込める。
 残りの任期で力点を置く政策には「医療と教育」と強調。これまでに大学生ら向けの給付型奨学金制度創設、医師養成奨学金貸付制度の支援拡充などを実施し、「暮らしを守る人材を育成・確保する仕組みをつくれるよう引き続き知恵を絞っていきたい」と語る。
 県教委が公表した県立高の次期再編計画(令和8~17年度)最終案で、高田高海洋システム科(定員40人)が10年度に募集停止となることにも言及。「もっとコミュニケーションを取れるよう、県とのパイプを太くしていきたい」と意欲を語った。
 3年前の市長選は、4選を目指した当時の現職・戸羽太氏(61)と、農水省を退職して挑んだ新人・佐々木氏との一騎打ちとなった。
 同市出身の佐々木氏は大学進学を機に古里を離れ、知名度不足が大きな課題だったが、「大学誘致」「4年間で農林水産業の生産額倍増」「4年間で新規雇用1000人創出」などの公約を掲げて支持を集め、戸羽市政への批判票も取り込んだ。結果、戸羽氏を1195票上回る6843票を獲得し、12年ぶりとなる新市長に就いた。
 選挙公約を巡っては、「農林水産業の生産額倍増」に絡む展開として、ニッスイのグループ会社によるサーモン養殖がスタート。佐々木市長が5年春にニッスイ本社に出向き、役員と面会したのが起点となり動き出した事業で、令和12年の水揚げ量は2500㌧を計画している。
 「大学誘致」関連では昨年12月、市と中央大学(本部・東京都)が包括連携協定を締結。大学内への設置を構想している新学部のフィールドワーク実施をはじめ、幅広い分野で連携していく。都内にある国立大との新たな連携に向けた協議も進めており、今後公表される。
 1次産業や産直施設、芸術・文化の関係者、子育て世代らと課題解決のための懇談の場も設け、ある産直関係者は「困っている市民の声に丁寧に耳を傾けてくれて熱心だ」と評価する。
 一方、「大学誘致」に関して、市長は昨年12月の市議会定例会の一般質問で「当初から大学の校舎を新たに建てるという考えはなかった」と答弁し、物議を醸した。「新規雇用1000人創出」は進ちょく状況が示されておらず、一部市民からは「本当に達成できるのか」と疑問を呈する声も聞かれる。
 昨年12月には、自身の後援会など二つの政治団体が、令和5、6年の政治資金収支報告書を県選管に提出していなかったことが判明。市長は資金管理に関与しておらず、「客観的な資料を基に第三者である弁護士に調査を依頼している。調査が終わり次第、結果を示したい」としている。
 市長は過去に続投への意欲をうかがわせる発言をしたこともあったが、現在は「白紙」と明言を避ける。「与えられた今の任期で何をやるか、何を残すかということだけに集中したい。残り1年間、一日一日を大事にして全力で仕事に当たる」と意気込む。
 今のところ、市内で新人擁立などの動きは表面化していない。戸羽氏は東海新報社の取材に対し、「今の市政は駄目だと思う。ただ今は何も考えていない」と述べた。
 市総人口は1月末時点で1万6775人。市が本年度策定を目指す市人口ビジョン・第3期市総合戦略の素案では、2070(令和52)年の市人口の目標値を6000人と定めている。次期のまちのトップには人口減が進行する将来を冷静に見つめながら、地域活性化、持続的なまちづくりを進める難しいかじ取りが迫られる。
 8日現在、同市の有権者数は1万4890人(男7198人、女7692人)。3年前の市長選の当日有権者1万5802人と比べて、912人少ない。