〝生きる希望〟歌で届ける 大阪府の歌手・奥野ひかるさん 火災被災地で慰問ライブ(別写真あり)
令和8年2月22日付 6面
東日本大震災後から気仙両市の仮設住宅などで復興コンサートを開き、「仮設の歌姫」として親しまれる歌手・奥野ひかるさん=大阪府高槻市=は21日、大船渡市赤崎町の蛸ノ浦地区公民館と三陸町綾里の綾姫ホールで大規模林野火災の慰問ライブを行った。火災被災地での歌唱は、昨年11月に続いて2回目。持ち前の明るくパワフルなパフォーマンスに加え、東日本大震災に始まり、数々の被災地で出会った住民らの「生きる覚悟」を歌詞に込めた新曲『命』も披露し、大災害に見舞われた住民らに生きる希望を届けた。(菅野弘大)
奥野さんは、震災後の平成24年2月から被災地の仮設住宅などで慰問ライブを続け、「仮設の歌姫」「復興の歌姫」という愛称で親しまれるようになった。綾里の黒土田仮設が1回目の場所であったことから、「始まりの地」として特別な思いを寄せ、大規模林野火災で地域が被災したことを受け、昨年11月に綾里と赤崎町の仮設住宅を訪れ、仮設入居者らを歌で元気づけた。
今回は公民館での開催となり、午前中に蛸ノ浦地区公民館、午後に綾姫ホールを訪問。いずれも前回を超える数の住民らが集まり、このうち綾姫ホールには約30人が足を運んだ。
ライブは、浪花節を利かせた『なにわの女』で盛大にスタート。奥野さんは、住民らとの再会を喜びつつ、軽快なトークで会場の笑いを誘い、歌手の三橋美智也さん、演歌の春日八郎さんの楽曲や、昭和を彩った演歌をメドレー形式で歌った。
『星空の秋子』では、住民の名前に歌詞をアレンジして、目を見つめながら歌唱。『二輪草』では、舞踊をたしなむ住民と一緒に踊りながら歌声を響かせ、『ひかるのズンドコ節』では〝コールアンドレスポンス〟も交えて盛り上がった。
歌手になるきっかけをくれた亡き祖母の「人の役に立つ歌手になれ」という言葉に背中を押され、震災をはじめ、全国の災害被災地に足を運んできた奥野さん。15年間の活動の中で、災害に負けずに生きる被災住民らから「どんなにしんどくても、生きる覚悟を感じた。一生懸命生きることを教えてもらった」と振り返り、昨年秋に制作した楽曲『命』を披露した。「命が歌う生きる証、命が歌う生きる覚悟」と、力強くも心に染みこんでいく歌声を届け、涙を流しながらうなずく住民の姿もあった。
しみじみとした時間が流れる中、アンコールは明るい奥野さんを象徴する『ひかるtheSORAN』で締めくくった。終演後は、再訪する約束も交わしながら「また来るから、生きていてね」と笑顔で呼びかけた。
佐々木久子さん(88)は「(奥野さんを)初めて見たが、素晴らしかった。元気をもらえて、また来てほしい」と感想を話した。
奥野さんは「綾里は『人のために歌う』ことを教えてもらった場所であり、さまざまな思いが交差する中で、感謝を込めてライブができた。正直、震災15年とか、林野火災1年とかの節目をなくして、ただ普通に歌いに来られたらいいのにと思う」と心境を語り、「いつかは『仮設の歌姫』ではなく『復興の歌姫』として戻ってきたい。(被災地慰問は)辞める気はない。求められている間は、それに精いっぱい応えたい」と気持ちを新たにした。






