大震災15年/History3.11 あの日から② 地域への感謝胸に起業 SET理事・岡田勝太さん
令和8年3月6日付 1面
陸前高田市の認定NPO法人SET(三井俊介理事長)理事の岡田勝太さん(34)=東京都出身=は昨夏、地域と海外をつなぐコンサルタント業㈱仁藝(にんげい)を立ち上げた。東日本大震災直後、関東圏に住む大学生らが被災地支援のため結成したSETの創設メンバーで、大学卒業と同時に団体の拠点である広田町に移住した。「このまちと人に育ててもらった」。15年がたとうとする今も変わらない地域への感謝を胸に、新たな挑戦に踏み出した。
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2月21、22日、高田町の商業施設「アバッセたかた」パブリックスペースで、海外の留学生らによる企画展が開かれた。
同展は、SETが手がける地域滞在型プログラム「ノーフュンス・ジャパンボランティアプログラム」の一環。1月初旬から2カ月間、同市で暮らしたアメリカ、オランダ、デンマークなど5カ国の計6人が、滞在の様子を写真などを通じて報告した。
仁藝はSETから委託を受け、プログラムを企画・運営。岡田さんは「参加した学生から『地域に温かく迎え入れられ、うれしかった』という感想を聞くことができた」と手応えを語った。
「仁藝の事業はこれから。人と人との偶然の出会いは、予期せぬ未来を生むと思う。だからこそ海外の多様な人とこの地域をつなげたい」。そんな展望を描く原点が、自身と陸前高田との出合いにある。
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震災発生時は法政大1年で、2カ月後の平成23年5月からSETメンバーとして陸前高田に通い続けた岡田さん。人知を超えた甚大な被害に遭っても復興する未来を信じてまい進する被災者の姿に、畏敬の念を持った。支えるつもりが、逆に刺激を受け、「自分もこの地域で住民と一緒に何かに挑戦したい」と思うようになった。
そんな自身の体験をSET事業として具現化し、全国の学生に提供しようと、平成24年以降、学生らが一定期間滞在するプログラムを実施。1週間の短期型の参加者は通算1000人を超え、「暮らしの学校」をテーマとする4カ月間のプログラムは65人が修了した。
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次なる一手が、海外とのつながり創出となった。北欧デンマークの成人教育機関「フォルケホイスコーレ」が、自分たちと同じような取り組みを国レベルで展開していることを知り、知見を深めようと、平成30年、自費で同国を訪ねた。
同機関は「人生の学校」と呼ばれ、17歳以上であれば誰でも入学でき、入学試験や成績表などの評価がないのが特色。国内に約70ある学校はいずれも全寮制で、年齢や国籍が異なる学生と教員が寝食をともにしながら自分の人生について見つめ直すカリキュラムとなっている。
国民のウェルビーイング(幸福度)が世界トップ水準とされるデンマーク。しかし、若者の幸福度は低下傾向といい、訪問した際、現地の人から地域コミュニティーの衰退が課題であることを聞いた。人口減、少子高齢化が進行し、将来への漠然とした不安が渦巻く日本と同様の問題を抱えていると感じ取り、同機関と連携することで解決し合えるのではないかと着想を得た。
同機関の学校の一つ「ノーフュンス・フォルケホイスコーレ」とタイアップすることが決まり、平成31(令和元)年度、同校の学生や関係者を市内に2度招き、試験的な交流事業を実施。新型コロナウイルス禍に伴う2年間の足踏み期間を経て、4年度、同校の学生が2カ月間滞在するSET主催のプログラムが本格的に動き出した。
SETのグローバルな取り組みを、一緒に推進していこうと生まれたのが仁藝だ。
同社はSETがこれまでに築いた海外とのネットワークを生かし、地域と世界中のプレーヤーをつなげ、互いの地域課題を解決する新ビジネス創出を目指す。国内外でつながり合うための活動資金を集める「ファンドレイジング」事業にも取り組む。
「一つの地域、一つの国では解決できない課題もつながり合えば可能性は広がる。仁藝がそのハブ(結節点)になりたい」と意気込む。(高橋 信)
=3面に続く=






