地方創生へ官学連携強化 市、東京大、大学院が協定 先端技術活用し1次産業振興 市有施設にサテライトベース設置、学生プログラムも始動
令和8年3月10日付 1面
陸前高田市と東京大学生産技術研究所、同大大学院農学生命科学研究科は9日、水産分野における先端技術を活用した研究開発、新たな産業創出などを手がけていくための連携協力協定を締結した。3者が取り組んできた農業分野での連携を拡大して基幹産業である1次産業の振興を図り、東日本大震災からの復興、地方創生を目指す。市有2施設に同大、大学院のサテライトベースを開設し、教育研究拠点とするほか、令和8年度から学生らによる現地での体験プログラムを始める。震災発生からあす11日で15年。大災害を機につながった官学の関係性深化を通じた新たな展開に期待が集まる。(高橋 信)
協定締結式は同日、市役所で行われ、佐々木拓市長、石渡史浩副市長、山田市雄教育長、同大生産技術研究所の年吉洋所長、同大大学院農学生命科学研究科の岩田洋佳副研究科長らが出席。協定書に署名し、連携強化への思いを一つにした。
連携の柱は、▽クルミ科の木の実「ピーカンナッツ」の品種選抜、栽培技術の確立、商用栽培に向けた人材育成▽農業生産、空間・景観デザインに関する教育研究▽水産業、関連産業の振興、持続的な海洋生物資源の利用▽地域の魅力向上に資するデザイン、ブランド構築、クリエーティブ活動──の四つ。
メインとなる水産分野では、養殖業の生産現場における先端技術活用、生産性向上、新産業構築に向けた研究開発などを展開していく構想。ツバキや米崎りんご、北限のゆずなど地域資源の魅力向上に関する取り組みも検討していく。
サテライトベースは、高田町の市コミュニティホールの一室と、米崎町のピーカンナッツ苗木育成研究施設に設ける。大学関係者らの教育研究や意見交換、セミナーなどの拠点として活用する。
体験プログラムは7月下旬に3日間の日程で実施し、学生らが農水産物の生産現場の視察、関係者らとの意見交換などを行う計画。人数は4人を想定し、全学の学部生、大学院生を対象に募集・選定する。
3者の連携は、収益性の高いピーカンナッツを通じて同市の農業再生、地方創生を図る「ピーカンナッツプロジェクト」を機に始まった。
同プロジェクトは平成28年、製菓会社㈱サロンドロワイヤル(本社・大阪市、前内眞智子代表取締役社長)を含む産官学で動き出し、4者は翌29年7月に連携協力協定を締結。米国で普及しているピーカンナッツの産地化や食文化浸透などに向けた取り組みを進めている。
市は令和5年以降、同大との連携した取り組みを他分野にも広げられないか、大学の関係機関と検討。ピーカンナッツプロジェクトに関する共同研究契約、協力協定を生かしたまま、新たに協定を結ぶこととした。
今回の展開を祝うかのように、同プロジェクトも新たな節目を迎える。サロンドロワイヤルが中心となり、市街地そばの被災低地部約8・8㌶で苗木を植える取り組みが始まり、10日、現地でキックオフとなる植樹が、同大や市関係者らを交えて行われる。
年吉所長は「3者が一緒になって農業面だけでなく、水産業をはじめ新しい分野で連携することで、このまちの産業に貢献していきたい」と展望した。
岩田副研究科長は「ピーカンが年月をかけて成長するように、3者の連携も時間を重ねながら、より大きく、より確かな、より発展的なものに育っていくことを期待している」と願った。
佐々木市長は「被災地の復興、経済発展を目指し、生産現場、企業、大学などと連携しながら、生産面を中心とした技術革新によって、本市のみならず、三陸の農林水産業を発展させていきたい」と決意を語った。
21日に日本学術会議公開シンポ
日本学術会議公開シンポジウムは、21日(土)午後1時30分から陸前高田市高田町の市コミュニティホールで開かれる。テーマは「産官学で推進する地域創生:ブルーカーボンがもたらす可能性」で、講演やパネルディスカッションが行われる。参加無料。
同会議内の食料科学委員会・農学委員会が合同で設置した「東日本大震災に係る食料問題分科会」などが主催。市が共催し、日本農学アカデミー、福島大、東京大大学院農学生命科学研究科などが後援する。
3部構成で、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」、海草や海藻が吸収してため込む炭素「ブルーカーボン」、産官学連携などに関する基調講演やパネルディスカッションが行われる予定。
会場参加は事前申し込み不要。オンライン参加は、インターネットフォーム(別掲QRコード)で申し込みを受け付けている。
問い合わせは、市企画政策課政策広報係(℡54・2111内線332、334)へ。






