History 3・11/データで見る被災地  深刻化する社会課題、対応いかに

 東日本大震災の発生から15年を迎えた被災地。気仙におけるハード面での復興は完了したが、人口減少や少子高齢化に起因する社会課題が山積している。基幹産業である水産業でも、近年は主力魚種が低迷。被災地を取り巻く状況や展望を、データから読み解く。

 

陸前高田 目立つ空き地

 

▽土地区画整理事業区域の土地利用率

大船渡市…90.2%(令和8年3月1日時点、予定含む)
陸前高田市…55.7%(令和7年11月末時点、予定含む)

 

 大船渡、陸前高田の両市では、東日本大震災で被災した市街地の都市基盤や宅地を整備する「土地区画整理事業」が行われた。
 陸前高田市は、同事業で整えた土地の利活用が大きな課題だ。高田地区186・1㌶、今泉地区112・4㌶で事業展開され、道路や公園、緑地などを除いた市有地、民有地106・6㌶の土地利用率は、昨年11月末時点で55・7%。民有地に絞れば34・8%にとどまり、かさ上げした市街地は空き地が目立つ。
 事業区域内では宅地などを整える前に大規模なかさ上げ工事を実施。壊滅的な津波被害を教訓とし、安全・安心なまちを形成するためだったが、大がかりな造成工事が広範囲におよび、時間を要した。その間に当初は戻る想定だった地権者らが、市内の高台や市外に住まいを再建し、結果、使うあてのない空き地が増えた。
 にぎわい創出の核を担う高田町の商業施設「アバッセたかた」そばで、事業展開するある商業者は、未利用地が散見される現状に「寂しさはあるし、もったいない。一方で、(軌道修正が難しい)事業の性質上、仕方がなかったとも思う」と複雑な心境を語る。「まちの活気や景観など、さまざまな面に影響が及ぶ。難題だろうが、行政にはなんとか利用が進むような対策をお願いしたい」と求める。
 市は平成31年1月から、土地所有者と利用希望者を結ぶ「土地利活用促進バンク」を運用。手厚い補助金制度も創設し、パンフレットを作成するなどしてPRしている。
 本年度までは国からの財政支援を受けながら、同市のまちづくり会社と連携した空き地解消への取り組みを検討。第2期復興・創生期間(令和3~7年度)終了に伴い、8年度は市独自の予算で取り組みを継続する方向で検討している。

 

人口減少
歯止めかからず

 

 令和7年4月1日現在の人口は、大船渡市3万1807人、陸前高田市1万6587人。平成22年の同日と比較し、それぞれ23・0%減、28・9%減だった。
 県によると、15年前の津波による死者・行方不明者数は大船渡市419人、陸前高田市1757人。気仙を悲しみの底に落とした人的被害に加え、避難などに伴う人口流出も進み、両市の人口はしぼんだ。行政機能や地域経済の縮小が懸念され、今後は将来を冷静に見つめたまちづくりが求められる。
 2070(令和52)年時点で6000人──。
 陸前高田市が本年度内の策定を計画する「市人口ビジョン及び第3期市総合戦略」素案の中で示された人口の目標値だ。
 国勢調査によると、同市の2020(令和2)年の人口は1万8262人。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の人口推計では、2050(令和32)年に9616人と1万人を割り、2020年対比で47・3%減。その後も右肩下がりを続け、2070年には5380人と急激に減少する見通しとなっている。
 市は将来の人口を中長期にわたって展望するため、平成28年3月、人口ビジョン及びまち・ひと・しごと総合戦略(平成27~31年度)、令和2年3月に第2期戦略(令和2~6年度)を策定した。
 第2期までは、「人口減少を押しとどめる」との国の考え方に準拠して将来人口を展望。震災をきっかけに市外に転出した被災者の帰郷を重視した施策などを展開することで、2060(令和42)年時点の人口について、社人研推計の約8300人を大幅に上回る3400人増の約1万1700人を目標としていた。
 しかし、総合戦略に基づく取り組みを推進しても人口減、少子高齢化に歯止めがかからないことから、視点を転換。第3期の目標値(2070年時点)を6000人とした。社人研推計値と市目標値を比べた場合の伸び率は、第2期は41・0%だったのに対し、第3期は11・5%に縮まり、現実路線へと大きくシフトしたと受け取れる。
 市企画政策課の黒澤裕昭課長は「1万人を割り、6000人規模となる推計値に、正直戸惑いはあった。しかし、将来を見据えた対策を事前に打ち出していくためには、人口減少が進む現実を正面から受け止めることが重要。人口が減るからこそ、一人一人の市民をしっかりと育めるような対策を総合的に展開していきたい」と見据える。

 

主力魚種の不漁続く
両市で海面養殖の動きも


 大船渡市魚市場への水揚げ数量は、平成22年が4万9775㌧。23年は、イサダ漁の最盛期に震災に見舞われ、漁業生産基盤も被災して2万7937㌧に落ち込んだ。
 漁業施設など生産基盤が応急的に整い始めた24年は4万4102㌧、25年は4万3900㌧、26年は5万746㌧と次第に数量が増加していったが、近年はサンマや秋サケなど主力魚種の不漁が続く。主力魚種の低迷が響き、令和に入ってからの総水揚げ量の落ち込みは顕著だ。元年は3万7993㌧、2年は3万769㌧、3~7年は2万㌧台で推移している。
 主要魚種の不漁が深刻化する中、期待が高まっているのはサーモン養殖事業だ。陸前高田市では昨年11月、水産大手㈱ニッスイのグループ社が本格的に海面養殖に乗り出し、大船渡市では越喜来漁協と同社が試験養殖を開始。同市の盛川漁協は陸上養殖施設で育てるトラウトサーモン「大船渡サーモン」のブランド化に取り組んでいる。

 

事業所は後継者問題も


 大船渡商工会議所、陸前高田商工会の会員事業所は年々減少傾向にある。震災前の平成22年度と令和7年度を比較すると、大船渡市は16%減、陸前高田市は35%減。減少幅が最も大きかったのは、大船渡が23年度から24年度、陸前高田が24年度から25年度にかけてで、震災による被害も影響しているとみられる。
 その後も続く事業所減少の要因の一つとしては、「後継者問題」が挙げられる。店舗経営者の高齢化が進む中、後継者の確保に苦慮する事業者は少なくない。
 陸前高田市や住田町から事業承継事業を受託している永山悟さん(41)=高田町=は、「3年後や5年後の対策を取れる事業者は多くない」と話す。「自分の代で店は終わり」と考える経営者は被災の有無に限らず一定数いる。近年の物価高など、さまざまなマイナス要因が重なることで、今後、廃業が加速する懸念もあるという。
 加えて、永山さんは事業承継における課題の一つにグループ補助金制度を挙げる。中小企業を対象に復旧費用の4分の3を国と県が負担するこの制度は、被災した企業にとって〝復興の命綱〟にもなった。
 ただ、補助金で購入した施設や設備は、事業を継ぎたい人がいても転用などに制約があり、事業承継にとっては〝重荷〟になる恐れもある。永山さんは「再建時はありがたい制度だったが、現在は事業承継時の課題にもなる。現状に合わせた柔軟な対応が国や県には求められる」と指摘する。
 一方で開業のニーズ自体は少なからずあると分析したうえで「チャレンジしたい人をサポートする体制が充実していけば、新規開業、事業承継にもつながっていくのでは」と考える。