地域医療 10年後の姿は 将来像と国保診療所運営巡り懇話会で議論 人口減少、高齢化で厳しい見通しも

▲ 医療分野の実態や人口データなどをもとに将来像を議論

 10年後の大船渡市の医療を想像する──。市が設置した地域医療懇話会が17日夜に市役所で開かれ、地域医療の将来像と国保診療所に求められる役割・機能などで意見を交わした。人口減少や医療従事者確保の難しさといった課題を抱える中、現体制の維持に厳しい見通しが示されたほか、市が運営する国保診療所が抱える現状課題や利用状況も共有。懇話会は来年度も開催し、国保診療所などについて引き続き検討する。(佐藤 壮)

 

 懇話会は、医療関係者や学識経験者、関係機関、医療サービス利用者ら14人で構成。昨年10月以来の開催で、この日は代理を含め12人が出席。会長を務める気仙医師会の鵜浦哲朗会長は「活発な意見を寄せていただきたい」とあいさつした。
 議題のうち、「当市における地域医療の将来像」では、事務局の市市民生活部国保医療課が人口減少や少子高齢化の影響を解説。地域医療や福祉・介護面の各懸念点も示した。
 国立社会保障・人口問題研究所による令和17年の市内将来推計人口は2万6638人で、令和7年の3万2024人から17%減少。老年人口(65歳以上)は同2年をピークに減少しており、後期高齢者人口(75歳以上)は同12年まで増加する見込み。
 高齢者の独居世帯や「老老世帯」が増え、医療と介護・福祉の需要がより高まることが予想される。医療、福祉・介護の人材は今も不足状態にあり、適切なサービスを受けられなくなるといった課題が挙げられた。
 引き続き、出席委員の発言から、医師、歯科医師、薬剤師の各立場で10年後に想像される状況を整理。医師に関しては委員から「一番の課題は、気仙医師会会員の高齢化。10年後、今と同じように働けると考える会員は多くない。一般的に近年、若い医師は新規開業を『ハイリスク』と敬遠している。10年後に多くの医師が引退されると、当市の医療はかなり厳しいものになる」との声が寄せられた。
 人口減少や入院者数減などを受け、県立大船渡病院も今後、求められる役割が変化する可能性に言及する委員も。人口減少が進む一方、同市と住田町における昨年の救急出動件数は過去5年で最多だった状況も示された。
 歯科医師については東日本大震災以降、診療施設の閉院が続いている現状が話題に。「適正配置は人口2000人に歯科医師1人とされるが、市内はすでに歯科医師1人に人口2600人超という状況。かつて、歯科医師が足りない時代に『気仙は朝から患者さんが並ぶ』と言われた。10年後は過去のような状況に戻り、大変になるのではないか」などの発言があった。
 薬剤師の分野では、委員の一人が「多くの薬局は医療機関からの処方箋に依存している現状があり、開業医が閉院すれば、薬局もなくなる」と指摘。今後は在宅患者への対応増加といった予測も立つ半面、人材確保の課題が浮かび上がるという。
 三陸町に歯科も含め4施設ある国保診療所の運営状況は同課が説明した。期待される効果として「民間進出が期待できない地区で、身近な医療機関として医療を提供」といった点を確認。現況では▽綾里と吉浜診療所は1人の医師が兼務し、診療日が限定される▽コロナ禍ではワクチン臨時接種や、発熱外来を設置して診療を行った▽越喜来診療所は小児科も有し、地区外の患者が増えている──などの点が示された。
 意見交換では人口減少が進み、三陸町以外の地区でも民間進出に難しさが出ている現状を指摘する声も。「他の開業医ができないことをやる視点も入れるべきでは」「かかりつけ医と救急医療、在宅サービスの充実が望ましい。福祉を含めワンストップでの相談や、通院支援など医療にアクセスできる体制充実を」などの意見が出た。
 懇話会は令和6、7年度に各2回開催し、8年度も継続する。安居清隆市民生活部長は「実態に踏み込み、示唆に富んだ話をいただいた。国保診療所の役割と機能については、今後の行政の役割を考えるうえで欠かすことのできない重要な論点。診療所のあり方は人口減少や人口構造、医療資源を踏まえ、市として役割を的確にとらえていく。今後は具体的にテーマを絞り、さらに意見・提言をいただきたい」と述べ、協力を求めた。