大震災15年/History3.11 あの日から⑧ 励まされてきたのは 私たち 読書ボランティア・ささ舟

▲ ささ舟の読み聞かせで育った10代の鈴木さん(右端)と村上さん(右から2人目)が新メンバーとして加わったことを喜ぶ、磐井さん(左端)ら会員たち

 「子どもたちを励ましたい」。そう思っていた。その子どもたちに今、励まされている──。
 陸前高田市立竹駒小学校の読み聞かせボランティアとして平成19年に発足し、東日本大震災発生後は市内の仮設住宅や親子らの集まる場でも「おはなし会」を開いてきた、同市の読書ボランティア「ささ舟」。「あの頃のがれきだらけのまちを見て育った子どもたちが今、同じ場所に立っているんですよ。信じられない」。ささ舟代表の磐井律子さん(82)はそう言って目を輝かせる。
 今年、同団体に新メンバーが加わり、2月には市立図書館主催のおはなし会で〝デビュー〟も果たした。大船渡東高を卒業したばかりの鈴木恭佳さん(18)=矢作町=と、この春、高田高2年に進級する村上美緒さん(16)=同=の2人だ。
 2人は幼なじみ。そして、矢作小時代にささ舟の読み聞かせを聞いて育った子どもたちでもある。
 「私も活動に参加させてもらえませんか」
 昨年、市内のボランティア団体とその活動に関心がある人との交流会で、磐井さんは鈴木さんにそう話しかけられた。隣には村上さんの姿もあった。驚いて、磐井さんが「学校の先生に言われてきたの?」と尋ねると、2人は首を横に振った。
 「小学生の頃、すごく引き込まれる話し方で絵本を読んでくれたことが印象深くて、あこがれていたんです。私もあんなふうにやれたらいいなあって」。鈴木さんはそう思い、勇気を出して声をかけたのだという。
 一方の村上さんは、母がささ舟の元メンバー。いつも身近に読み聞かせ活動があった。村上さんも子ども食堂のボランティアをするなど社会貢献への思いが強く、小さい子らと関わることにも関心がある。
 どちらもまだ物心つかない頃に経験した震災。しかしその脳裏には、「ささ舟さんをはじめ、地域の大人が自分たちを守ろうとしてくれていた。ずっと見守ってくれていた」という記憶が刻まれている。
 鈴木さんは「ささ舟さんのおかげで、本を読む楽しさを知り、世界が広がった。私もそのお手伝いをすることで恩返しをしたい」と語る。
 2人の申し出に、メンバーは万感の思いを抱く。「あのつらい時期、『子どもらに寄り添わねば』という使命感だけで立ち上がった。でもこれまでやってきたことには意味があったんだ」と。



 ささ舟の会員3人も津波で家を失ったり、家族や身近な人を亡くした。当時の竹駒小校長だった伊藤清子さん(73)に、「できればすぐにでもまた学校に来てほしい」と要請された時も、磐井さんは断った。「遺体安置所を巡るような毎日で、とてもじゃないけれどそんな余裕はなかった」。
 だが、再三「子どもたちが不安定になっている。少しでも震災前と同じようにしてやりたい」と伊藤さんに乞われ、ささ舟も意を決した。ところがいつも通りに読み聞かせているつもりなのに、児童が全然笑わない。「読み手の不安は子どもにも伝わってしまう。私たちがこんな状態じゃ、続けていても…」と、磐井さんは自信を失ったという。
 そんな時、絵本作家の宮西達也さんが来校。ユーモアたっぷりの読み聞かせで知られる宮西さんの身ぶり口ぶりに、神妙な面持ちだった児童の一人がまず吹き出した。そこからはせきを切ったがごとく大笑いの連続に。教員も、同席した会員たちも一緒になって笑った。「私たちにもまだ、笑える力が残っている」──。これが気力を取り戻す最初の一歩になった。
 「宮西さんのおはなし会も、その後にまたささ舟が通うようになってくれてからも、本が持つ力、読み聞かせが持つ力を実感した」と話す伊藤さんも、退職後に同団体へ加入。今では頼れるメンバーの一人だ。



 ささ舟が震災発生後、他の小学校や避難所、住田町の施設でも読み聞かせするようになったのにはわけがある。(鈴木英里)=7面に続く=