燃油高騰の影響じわり 気仙各地の事業者ら 早期収束へ切実な願い
令和8年3月21日付 1面
イラン情勢の緊迫化を背景とする原油価格の高騰が、気仙の産業や市民生活に影響を及ぼしている。原油の値上がりは燃料費やプラスチックなどの原料価格に直結し、これらを背景とした製造コスト上昇に伴う幅広い品目の値上がりも懸念される。影響はあらゆる業態におよぶ恐れがあり、事業所や消費者は先行きが不透明な中で事態の早期収束を願っている。
「昨今の世界情勢の不安定化や急激な円安により、ガソリンの安定的な供給が困難となる可能性がございます」
大船渡市内のガソリンスタンドでは、こうした張り紙が見られるようになった。店主は「今のところは元売りから定期的にガソリンが来ている。今後、他の店舗で販売できなくなり、客が集中してしまうといったことも考えられる。先行きは見通せない」と話す。
イラン情勢を受け、3月12日以降、ガソリン価格は1㍑あたり約30円上昇し、店頭価格は180~190円台の販売に。19日からは政府の補助金を受け、170円台での販売が目立つようになった。
影響は小売店にも及ぶ。原油高騰にかかる食料品の値上げは始まっていないものの、仕入れ用車両の燃料費がかさんでいる状況にある。同市内の経営者の一人は「今後、ガソリン代の引き下げが決まるにしても、実際の価格に反映されるまでには時間がかかると思っている。加えて、2、3カ月後には石油が関わっているものの値段が上がってくるのでは」と懸念を示す。
浜では今月から養殖ワカメの収穫が本格化しており、同市内の漁業者は「ボイル作業には重油が必要。漁業者の経費も増すだろう」と話した。
市内では先月下旬から、額面5000円の商品券を2500円で販売するプレミアム付商品券事業が行われている。コロナ禍から数えると第5弾だが、今回は給油に用いるケースが多いという。市は現在、行政面で目立った対応策はとっていないが「状況を注視している」としている。
運送会社への影響も大きい。週1、2回、燃料販売会社から軽油を購入しているという気仙地区内の事業所は、大幅な値上がりによって打撃を受けている。
この事業所では、供給制限に気をもむ。普段は1社から軽油を仕入れているが、燃料のひっ迫を背景に量を制限され、不足分を別会社から仕入れている。経営者は「価格の高騰も非常に苦しいが、不安定な状況下では目をつぶるしかない。それよりも量の制限が一番困る」と不安を募らせる。
陸前高田市矢作町のイチゴ観光農園「いちごパーク」。運営する就労継続支援B型事業所「せせらぎ」(米田智所長)は、ハウス内の暖房などで使う燃料だけでなく、トレーなど石油由来の資材についても危惧する。
今季は昨季よりも生育が遅れ、間もなく収穫のピークを迎える見込み。重油や灯油は当面必要な量は確保できているものの、高騰が続けば支障が生じる。
米田所長は「予期せぬ事態。イチゴを入れるトレーも在庫がなくならないか心配。利用者へのサービスに関わってくるので、一日も早い収束を願っている」と話す。
一方、住田町世田米の特別養護老人ホーム「すみた荘」(鈴木玲施設長)では、24時間体制のボイラー稼働に木製チップと重油を併用しており、送迎用車両の燃料費増大にも頭を悩ます。価格上昇分を利用料に転嫁するのが難しいだけに、横澤孝一事務長は「一刻も早く状況が沈静化することを願うばかり」と話す。
影響は衣料品に及ぶ可能性も。合成繊維は石油が原料となるため、原料費上昇も懸念される。アウトドアブランドを中心とした衣類を販売している世田米のセレクトショップ・fukura(服蔵)の泉田洋店主は、「すでに近年の物価高騰で商品が値上がりしていて買い控え傾向にあるので、これ以上、上がらないことを願うしかない」と話す。
鶏肉加工を展開する同町の住田フーズ㈱(吉川達哉代表取締役社長)では、蒸気を発生させる機械に重油を使用しているが供給が制限される状況にあり、取引先に声を掛けながら確保を進めているという。
こうした中、同町では4月にプレミアム率100%の商品券「すみチケ2026」が販売される。物価高騰下における家計の負担軽減を図ろうと、500円券20枚を1セット(1万円分)とし、5000円で販売。図らずも原油価格高騰と時期が重なり、商品券活用による町民の負担軽減効果が期待される。






