来訪者の安全確保策共有 初の事業者向け津波避難等防災対策研修会 「原則、徒歩避難」の対応学ぶ

▲ 事業者向けに初めて開催された防災対策研修会

 大船渡市による初の事業者向け津波避難等防災対策研修会が27日、盛町のシーパル大船渡で開かれた。同市内では、184事業所が日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画の作成義務者となっている。出席者は、従業員や買い物客をはじめ、来訪者の安全確保を最優先とした避難行動について確認。市が徒歩避難を原則としている中、到達予想時間を踏まえた行動に加え、要支援者らが車両避難を行う際の注意点などを共有した。(佐藤 壮)

 

 計画策定は法律に基づき、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震により30㌢以上浸水すると想定されている地区の事業者が対象となる。市によると、すでに多くが避難計画をまとめているという。
 研修会は避難対策の共通理解を深め、迅速・的確な初動対応や避難行動の実践力を高めようと企画。事業所関係者ら60人余りが出席した。
 冒頭、市防災管理室長を務める新沼晶彦総務部長が「令和4年に岩手県から最大クラスの津波シミュレーションの結果やその被害想定が公表されたが、避難の迅速化を図ることで『犠牲者ゼロ』が可能と試算されている。昨年まとめられた津波避難対策検討会議での報告書を踏まえ、より一層の減災・防災意識を高めることが重要」とあいさつ。同管理室の伊藤晴喜次長が想定される津波避難などを解説した。
 県から示された最大クラスの津波浸水想定は、東日本大震災の浸水域よりも広範に及ぶ。市内の各漁港や河口部での第1波到達時間は地震発生から17~36分と予想されている。
 大船渡町のキャッセン大船渡から、比較的ゆっくりとしたペースで徒歩避難を始めた場合、高台に位置する加茂神社までは16分、大船渡地区公民館には29分を要すると試算。地震発生から5分後に避難を開始しても間に合う見込みが示された。
 東日本大震災翌年の平成24年に実施した市民アンケート調査によると、避難する際に困ったこととして「道路が渋滞していた」を挙げる割合が高く、車両避難時に危険を感じたことでは「渋滞して車が動けない状態」の回答が目立った。徒歩では10分以内に避難を完了したのが59%、20分以内が78%だったのに対し、車では10分以内が45%、20分以内が67%で、いずれも徒歩を下回った。
 こうした状況を踏まえ、市側は「原則、徒歩避難」を強調。一方で、各事業所では障害者雇用などが広がる中、津波到達時間までに想定区域から徒歩で出られない人や、その支援者による自動車避難を容認する。
 車による避難可能地域は「幹線道路(国道、県道)と平面交差(横断)しないで、津波浸水想定区域外に避難できる道路が確保されている地域。ただし、幹線道路の交通量が少なく、容易に横断できる地域は除く」とし、徒歩避難者の避難を妨げない道路幅がある場合に限定。伊藤次長は「避難所まで〝数珠つなぎ〟になって、浸水エリアから出にくくなることも考えられる」とし、浸水区域外の駐車スペースにまず退避し、落ち着いてから指定避難場所まで移動するといった流れを示した。
 引き続き「従業員・お客様の避難対策」をテーマに、東北大学災害科学国際研究所の柴山明寛准教授が助言。事業所の具体的な取り組みや、従業員個々の望ましい行動などを伝えた。
 「全社員が知っているべき情報」として、平日や休日、昼間、夜間別にそれぞれ、事業所勤務者や来訪者の数を把握する重要性を強調。避難ルート設定では、浸水エリアから抜けるだけでなく、土砂災害特別警戒区域を避ける視点にも触れた。
 役割分担では、避難時間と津波到達時間を踏まえて2人一組で施設内を見て回る「捜索班」などの配置に言及。出張なども想定し、従業員の誰もがさまざまな避難行動をできるようにする体制づくりも求めた。
 また、来訪者への対応として「避難時の判断基準など災害時の対応については、必ず来訪者が分かる場所に提示する」「避難誘導の際は建物の入り口や交差点などに人員を配置する」「避難アナウンスは命令口調でアナウンスする」などを伝えた。
 大船渡消防署員からも、事業所ごとの備えとして、防災訓練実施や日常の火災予防対策などに関する説明が行われた。市などでは今後も、事業者からの相談等に応じ、自主的な防災力向上の取り組みを後押しする。