車避難 対策実施すれば可能 高田松原エリア 海水浴場の避難路拡幅など提言 有識者会議が経過報告書まとめる
令和8年4月1日付 1面
新たな津波避難計画策定に向け、車を含む避難のあり方を検討している陸前高田市の有識者会議は、高田松原エリア周辺における議論の第1次経過報告書をまとめた。シミュレーションの結果、避難誘導や高田松原海水浴場における避難路拡幅・増設などの対策を実施すれば、「車避難は可能」と提言。一方で、同エリアを含む高田地区は広幅員の道路が整備され、市内他地区に比べて避難の好条件下にあるものの、車避難の課題が浮き彫りとなったことから、同会議は「市内全域の一律したルールを作るのは困難であり、場所ごとに検討すべき」とした。来年度以降はモデル地区の沿岸集落を中心に検討していく。(高橋 信)
「一律のルール設定困難」
手交式後、報道陣に報告書の内容を説明する委員ら
報告書の手交式が3月30日、市役所で行われ、有識者でつくる市津波避難計画策定アドバイザリー会議の牛山素行委員長(静岡大防災総合センター教授)をはじめとする全5人の委員、佐々木拓市長らが出席。牛山委員長が佐々木市長に報告書を手渡し、概要を説明した。
佐々木市長は「避難計画を具体的に作成する際、非常に重要な報告書となる。市のみならず、関係機関の支援や協力をいただきながら、示された課題の解決に取り組んでいきたい」と述べた。
シミュレーションは▽高田松原津波復興祈念公園▽高田松原海水浴場▽まちなか周辺駐車場▽高田松原運動公園──の4カ所を避難開始地点に設定。観光利用ピークとなる夏季の週末と、各施設駐車場の満車状態時における避難を想定し、津波が防潮堤を越流する目安の地震発生後40分以内に、浸水域外に移動できるか検証してきた。
シミュレーションの結果、高田松原運動公園東側(サッカー場周辺)と高田松原海水浴場の避難先に設定した夢アリーナたかたで、入庫待ちの車列が残ることが判明。海水浴場は砂浜から出発地の駐車場まで遠く、避難完了目標時刻(地震発生後40分)になっても、駐車場から出発していない車が発生することが分かった。
対策として、夢アリーナたかたのほか、高田高グラウンドを避難先に加え、海水浴場は松林の通路拡幅、防潮堤の階段増設、避難用滑り台の設置を提言。さらに橋りょうの通行不可、液状化現象、交通阻害など、不測の事態を条件に加え、最悪の状況下での課題を抽出した。
まちなか周辺駐車場は徒歩による本丸公園への避難誘導を原則とし、高齢者らは車避難を容認。ただし、休日などは車避難の割合を全車両の1割程度に抑制する必要があると指摘した。海水浴場は避難路対策を講じたうえで、車避難を認めた。
残る津波復興祈念公園、運動公園も車避難を容認するが、施設管理者の避難誘導計画策定、周知の徹底などを求めた。
県が公表した最大クラスの津波浸水・被害想定を受け、市は令和5年7月、津波避難計画を策定しようと、アドバイザリー会議を設置。牛山委員長や、東京大生産技術研究所の加藤孝明教授、同大大学院情報学環の関谷直也教授をはじめ、災害情報学や防災まちづくりなどにおける国内トップレベルの研究者ら5人で構成する。
市地域防災計画における津波避難は原則徒歩と明記しているが、同会議では高齢化などを踏まえ、車避難の必要性を慎重に検討。1カ所目のモデル地区に、道の駅や震災津波伝承館、運動公園などがあり、多数の観光客らが訪れる高田松原エリアを選んだ。
同会議は8年度、同エリアの課題、対策の検討を継続するとともに、沿岸集落の避難シミュレーションに入る。
牛山委員長は「車避難をどうするか全国一律の方針は設けられず、根拠のある客観的な情報に基づき、場所ごとに車避難を容認する、しないを考えていく必要がある。避難条件が悪い場所では、さらに車避難の最適解を見つけるのは難しいことが考えられるが、その難しさを提起することも意義があると思う」と述べた。






