■視点/大船渡市大規模林野火災に伴う森林再生計画㊤ 所有者負担軽減に道筋 今後は「いつ、どこから」に焦点
令和8年4月8日付 1面
大船渡市林地再生対策協議会は先月、昨年2月26日に発生した大規模林野火災に伴う森林再生計画を策定した。被災森林3370㌶のうち、53%に当たる1785㌶を人工林が占めており、その再生方法や具体的な施策などを体系的に取りまとめた。同4月7日の鎮火宣言から、1年が経過。全国的にも例がない規模の事業展開に向けた指針から見える今後の展望と課題を探る。(佐藤 壮)
計画の基本方針では、居住地や綾里川ダム、大船渡湾、漁場など、生活やなりわい環境への影響を考慮し、エリア区分による優先度を勘案して森林所有者・管理者に配意しながら、森林全体の多面的機能の回復を図る──としている。
具体的には▽被害の大きい人工林の復旧は、森林災害復旧事業を最大限に活用して伐採や植栽などを進める▽焼損の著しい地区は、治山ダム整備等の土砂流出対策を進める▽天然林は経過観察しながら、天然更新による自然復旧を基本とする▽新たな取り組みや新技術を導入し、効率的に再生を進める──を掲げる。
さらに、▽被災木の供給円滑化に向けた情報共有や需要喚起への意欲的な取り組み▽森林再生の取り組み状況に関する国内外への積極的な発信▽スギやカラマツ、広葉樹などタイプが異なる樹種を植栽することによる延焼しにくい多様な森林への誘導──といった方針も盛り込まれた。
策定趣旨には「市、県、国、関係団体等の認識を共有するとともに、再生の方法や具体的な取り組みを体系的に定める」とある。市は主体となって事業発注などを進めるほか、県や国は、技術的助言や補助制度で支援する。県はさらに、広域的な連携体制の構築に向け連絡調整を担う。
気仙地方森林組合は、地域の森林・林業に精通した担い手として森林再生の中心的な役割に位置づけられている。県森林組合連合会も担い手となり、県内外の林業事業体や関係団体との連絡調整、被災木の供給円滑化を図る。林業事業体や関係団体に関しては「事業連携体制の構築により、安定的な施工体制を確保する」とある。
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被災した森林の所有者にとって、この計画は、国の激甚災害指定に伴う森林災害復旧事業、いわて環境の森整備事業、森林整備事業を活用しながら再生を進める中、市が補助制度を創設することで、私有林の復旧では導入事業を問わず、伐採や跡地造林、下刈りなどの費用を全額負担し、所有者負担を抑える方針が明記された点が大きい。
私有林を対象とした森林整備事業も、被災木の伐採・搬出、地ごしらえなどの跡地造林、下刈りも含めて森林所有者の負担はない。下刈り費用には、市森林整備推進事業による補助が充てられる。同じく私有林で進めるいわて環境の森整備事業も、市の補助で森林所有者の負担はなしとする。
昨年秋、市が所有者向けに開催した説明会では、森林災害復旧事業の場合、伐採や植栽に対する所有者の負担はないが、森林保険の保険料や下刈り作業以降の管理費用などが発生することになり、下刈りの負担軽減を検討する姿勢を示していた。他の事業に対する支援も、確約までには至っていなかった。今計画は、所有者負担軽減への道筋をつけた。
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一方、所有者が抱く大きな心配事が、この計画ではまだ見えていない面もある。計画期間は令和11年度までだが、自らの森林で、再生に向けた伐採がいつ始まるのかは、明示されていない。どの地域から着手するのかも、基本方針や森林再生のエリア区分から読み取ることはできない。
「いつ、どこから」が分からない不安──。15年前の東日本大震災で被災した市街地や住宅地の再生に向け、気仙で展開された行政主導による大規模な防災集団移転促進事業や土地区画整理事業でも、仮住まいを余儀なくされた被災者が、いつ、どこに再建できるかが確定しない時期が長く続いた。森林所有者にとっては今、同じような状況といえるのではないか。
多くの調整や手続きを経て、事業に入らなければいけない行政側の事情は分かる。正確な対応は重要ではあるが、それとともに、情報や連絡を待ち続ける所有者の不安に、どう寄り添っていくか。計画には直接盛り込まれていない視点からの支援や対応の充実も求められる。






