リハビリの必要性伝えたい 奈良県の専門医・松井さん 勝久会勤務 医師試験の不合格碑を建て話題にも 昨年から気仙両市の施設で診療
令和8年4月12日付 7面
奈良県のリハビリテーション専門医・松井元哉さん(33)は、昨年8月から2カ月に1回のペースで大船渡市の医療法人勝久会に勤務し、同法人が運営する気仙両市の施設で診療に当たっている。松井さんは学生時代、旅行先の一関市内で医師国家試験の不合格を知り、その苦い思い出を記念碑として残したユニークな経験の持ち主。ゆかりある岩手、三陸・気仙の地で専門医として仕事に励み、「地域におけるリハビリの必要性を伝えていきたい」と意気込む。(三浦佳恵)
松井さんは自転車と旅行が好きで、奈良県立医科大学入学後に自転車サークルを創設。6年時の平成31年3月には仲間と自転車で卒業旅行に出掛け、初めて東北を巡った。
岩手では陸前高田市などに立ち寄り、一関市川崎町内を移動中に医師国家試験の合格発表を確認した。緊張しながらスマートフォンで合否を確かめたところ、結果は不合格だった。
その後の1年間は旅行を控え、試験勉強に集中。そのかいあって、2回目の受験で合格を果たした。
浪人生活となった1年間は、自身を見つめ直す期間にもなった。医師として、自分がやりたいこと、得意なことなどを生かせる分野で働きたいと考えていたところ、母校でリハビリ科の専門研修プログラムが新設され、まだ数が少ないリハビリ専門医の道を選んだ。
研修医を終えたころ、松井さんは再び仲間と岩手を訪問。遊び心で用意した木の板に「松井元哉 第一一三回医師国家試験 不合格発表 閲覧之地」と記し、記念撮影をした。さらに、「本物の石碑を建てたい」という突拍子もない提案に、友人や一関市内の業者、地権者らが協力。立派な御影石製の碑(高さ84・5㌢)が建った。
石碑はテレビ番組や新聞などで取り上げられ、人々の関心を集めた。松井さんはリハビリ専門医として母校の付属病院に勤務し、〝人の移動の安全と快適性を高める医学〟とされる旅行医学の知識も深め、日本旅行医学会認定医にもなった。
勝久会には、後輩医師の紹介がきっかけで勤務が決まった。主に、同法人が運営するデイケアの利用者、介護老人保健施設(気仙苑、松原苑)の入所者らが、自宅や施設で生活ができる体力、動作能力などの回復を目指し、専門職員らと連携して診療を進めている。
リハビリ専門医は国内でまだ数が少なく、気仙で勤務するのは松井さんただ一人。苦しい挫折を面白く、楽しい思い出へと変える明るさで、利用者や入居者らと向き合う。
「大船渡、陸前高田がある三陸が好きで、通わせてもらっている。リハビリを通じて、地域の方々の能力を最大限引き出して生活ができるようにし、施設に入所していても自分でできることを増やせるようにしていきたい。リハビリに至る原因の予防に向けた取り組みも根付かせていければと思う」と力を込める。






