寺社建築に活用の動き 大規模林野火災の被災木  積極的な材利用 復旧・復興の鍵に

▲ 被災したケヤキを製材・加工して取り付ける「木鼻」

 大船渡市大規模林野火災で被災した雑木林の木材を、寺社建築に使う動きが出ている。大船渡町の本増寺(木村匡宏住職)で鐘楼堂の改修工事が行われており、柱の新調に合わせて取り付ける「木鼻」に、三陸町綾里で伐採し、製材した被災木のケヤキ材を生かす。多くの人々の目に触れやすい特徴的な部材に用いることで、関係者は復旧・復興に欠かせない被災木の有効活用への願いを込める。 (佐藤 壮)

 

 本増寺では現在、整備から約40年が経過した鐘楼堂の改修工事が進む。参詣で訪れた人々が内部につるされた鐘を自由に突いて音を響かせ、地域住民にもなじみ深い。多くの参詣者らが訪れる盆時期を前にした、7月末の完成を目指している。
 工事では屋根部分を外し、5本ある高さ4㍍前後のケヤキ材の柱を入れ替える。改修に合わせ、これまでなかった木鼻を取り付けることになった。木鼻は寺社建築をはじめとする伝統建築の特徴的な部分の一つで、柱から突き出た頭貫や虹梁に、彫刻などを施した木材を、かぶせる形で取り付ける。
 木鼻もケヤキ材で、大規模林野火災で全焼した綾里漁協の定置作業保管施設背後地に伸びていた被災木を切り出したもの。葉や樹皮部分は焦げていたが、幹の内部は問題がなく、製材後に綾里に工房を構える宮大工・坂本文夫さん(71)が保管していた。
 坂本さんが木鼻としての活用を打診したところ、本増寺側が快諾。木村住職(55)は「昭和8年に三陸地震大津波が起き、復興祈願や亡くなった方の慰霊として寺が生まれた。初代住職から、災いに対して敏感な寺でもある。大規模林野火災の時は、寺からも特に夜は火がよく見えた。こういう形で結びつくのであればありがたい」と話す。
 切り出した時点では、被災木から生まれたケヤキ材は活用の見込みがなかったが、坂本さんの手で彫刻された木鼻は、火災の影響は感じさせない。大きさは縦40㌢、幅70㌢、厚さ15㌢ほどで計8カ所に取り付ける。
 坂本さんは「木の内部は全く問題がない。柱として使う場合はもう少し乾燥させたほうがいいだろうが、木鼻であれば大丈夫」と語る。
 一日も早い復興や、被災した森林から出る木材利用にも思いをはせる。「捨てなければ、いい材として使えるものも多い。皮が焦げて硬化しているといった課題はあるが、むいてしまえば問題ない。チップなど燃料としてだけでなく、いい木はどんどん建材に使うべき」と力を込める。
 市林地再生対策協議会が先月策定した森林再生計画でも、基本方針に「被災木の供給円滑化や需要喚起に意欲的に取り組む」「被災木は、跡地造林区域の確保や利活用に向け、可能な限り搬出する」などを掲げる。
 被災木の利用は、森林資源の循環利用や森林所有者の施業意欲喚起に向け、品質の検証や積極的な普及活動を通じ、多方面での利用促進が求められている。今回の寺社建築での活用も、大きな弾みになりそうだ。
 計画ではさらに▽公共施設・公共工事での活用▽供給円滑化に向けた情報共有▽県内外のイベントなどでの需要喚起に関する普及啓発、民間企業訪問などによる販路開拓▽被災木利用チームの結成──といった点を盛り込んでおり、今後の具体的な動きが注目される。
 市は令和7年度、激甚災害指定に伴う森林災害復旧事業の先行展開現場として、綾里の市有林で被災木の伐採作業を進めた。木材は、建材用として合板製造工場や製材所に、燃料用として木質バイオマス発電工場にそれぞれ出荷された。
 有効活用できる被災木材量の試算は難しい状況ながら、本年度は私有林でも着手が見込まれ、相当量の搬出が予想される。同じ区域の森林内でも被害程度が異なり、伐採する長さの調節や、建材用途と燃料用途に選別する必要性など、健全な森林よりも手間がかかる課題もある。それでも建材などでの活用は、収益性が高く所有者負担軽減にもつながるだけに、積極的な動きが求められている。