果樹産地の魅力向上に弾み 市が「ワイン特区」に 県内沿岸部で初めて 免許取得の製造数量基準緩和

▲ 「醸造に向け、やっとスタートラインに立てた」とワイン特区認定を喜ぶ及川さん

 陸前高田市は、果実酒の製造免許取得に必要な製造数量基準が緩和される国の「ワイン特区」に認定された。通常、年間6㌔㍑の基準が2㌔㍑に引き下げられ、小規模事業者がワイン醸造に参入しやすくなる。シードルの原料となるリンゴも特区の生産物に認められ、免許を取得すれば市を代表する特産品「米崎りんご」の規格外品なども有効活用できる。遊休農地の解消など農業面だけでなく、地域経済や観光面へのプラス効果も期待され、特区を沿岸果樹産地としてのブランド力向上や地域活性化の起爆剤とできるか今後の展開に注目が集まる。(高橋 信)

 

 ワイン特区は構造改革特別区域法に基づく酒税法の特例措置により、要件を満たせば従来よりも少量で果実酒を造れるようになる制度。市は3月下旬、市内全域を対象にブドウ、リンゴを原料とする果実酒製造の認定を受けた。名称は「海風薫る果樹のまち陸前高田ワイン・シードル特区」。県内では花巻市、北上市に続く3例目で、沿岸部では初めて認められた。
 「無事認定され、ほっとした。非常にうれしい」
 海が見える米崎町の丘陵に設けた果樹畑で、農業・及川恭平さん(32)が手塩にかけて育てるブドウをめでながらそう語った。
 小友町出身の及川さん。大学卒業後にワイン専門商社、フランスのワイナリーで働いたあと、令和2年にUターンした。耕作放棄地を借りてリンゴ、ブドウの栽培に乗り出し、翌3年に独自のワイナリー「Domaine Mikazuki(ドメーヌ・ミカヅキ)」を立ち上げた。
 当初から自前での果実酒醸造を構想しており、小規模な設備でも始められるワイン特区申請について市に働きかけてきた。
 現在、管理する園地は小友町、米崎町内の5カ所計約2・5㌶。小友町の箱根山中腹にある旧そば店の市有木造施設を借り、今月中にも醸造所開設に向けた改修工事に入る計画だ。
 これまではシードル、ワインともに県外の事業者に醸造を委託。施設が完成したあと免許取得の申請手続きに入るため現段階で時期は未定だが、来年の仕込み開始を想定している。
 及川さんが特区認定を契機に関係機関・団体と連携しながら強化したいという取り組みが、産地を訪ねてワインを堪能する「ワインツーリズム」の推進だ。
 醸造所予定地のそばには宿泊施設「箱根山テラス」や、気仙大工左官の匠の技を発信する「気仙大工左官伝承館」、木工体験施設「杉の家はこね」などがある。「宿泊客にワインやシードルを提供したい。利活用が課題の杉の家で、気仙大工の木材を湾曲させる技術を生かし、ワインのたる作りもしてみたい。地元の方々が守ってきた箱根山の歴史と文化を観光に結びつけられれば」と夢を描く。
 市商工観光課の担当者は「未利用果実の利用促進、地域ブランドの確立、ワインツーリズムの誘致などの効果が期待され、地域経済活性化に大きく寄与する認定。ブドウやリンゴを生産する事業者の参入を後押しできるよう特区をPRしていきたい」と見据える。