五葉温泉 6月29日で閉館 コロナ禍以降の入湯者減やコスト上昇受け 施設承継先は今後も探る方針

▲ 6月29日に閉館となる「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」

 大船渡市日頃市町の「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」を運営する五葉地域振興㈱(柏﨑明彦代表取締役)は、6月29日(月)で同施設を閉館することを決めた。26年間にわたり営業を続けてきたが、コロナ禍以降の入湯者減少に加え、物価高騰に伴う運営コストの上昇などを受けて厳しい経営が続き、今後の見通しが立たず、苦渋の決断を下した。同社が所有する施設は引き続き、承継先を探ることにしている。(佐藤 壮)


 鷹生ダムの五葉湖そばにある五葉温泉は、三陸沿岸初の本格的な天然温泉施設として平成12年5月にオープン。泉質はアルカリ性で、pH値は10・3と県内屈指の高さを誇る。肌の新陳代謝促進や老化防止などに効果があるとされるメタケイ酸も豊富に含まれる「美肌の湯」として知られるほか、五葉山麓の恵まれた環境も好評を博している。
 施設のうち、温泉棟は男女別の大浴場やサウナ、水風呂、脱衣場、機械室を配置。交流棟には農林水産物直売コーナー、交流ホール、72畳の和室、食堂、厨房、事務室、トイレなどがあり、直売コーナーでは地元組合が農林水産物や加工品を販売してきた。
 東日本大震災以降、入湯者は年間7万人台で推移してきたが、コロナ禍で5万人台に落ち込み、回復できていない。市内人口や復興需要の収束による出先機関従事者の減少、観光客の伸び悩みに加え、近年各地で相次いでいるツキノワグマ出没の影響も受けているという。
 運営コストの上昇に伴い、入湯料の値上げに踏み切ったあとも、苦しい経営が続いた。施設整備から約30年を迎え、温泉棟で設備面の老朽化が目立ち、必要に応じて更新も行ってきたが、今後の設備投資への先行きが見通せないことも閉館の要因となった。
 施設を所有する五葉地域振興ではこれまで、経営を引き継ぐ事業承継先を模索してきた。このほど開かれた同社の取締役会では、食堂や売店も含め全ての閉鎖を決めたが、当面は施設は解体せず、承継先を引き続き探すことにしている。
 中東情勢の緊迫化などに伴い、温泉棟の稼働に必要な重油の確保が不安定な状況になった場合、予定している6月29日よりも早く閉館する可能性がある。また、設備に致命的な故障が生じた際も閉館を前倒しする。
 入浴前後に和室でゆっくり過ごすなど、長年利用する地域住民からは閉館を悲しむ声が出ている。約30年にわたり、ダム周辺に活気をもたらす中核的な役割を担ってきた。震災時には、被災者らの入浴支援にも対応し、心身のリフレッシュの面から復旧・復興を後押しした。
 柏﨑代表取締役は「温泉地にすることを夢見て挑戦して、エネルギーを持って努力を続けてきた先人の方々に敬意を表するとともに、申し訳なく思っている。自前で修繕を重ねるなどコストの縮減を図ってきたが、安定的な経営は難しく、やれることが限られてきている状況。関係者や地域住民の皆さんのご支援、ご協力には感謝でいっぱい」と話す。
 5月1日(金)から、入湯料金は大人は1000円から800円に、小学生は400円から300円にそれぞれ引き下げる。「食事処」の営業は同15日(金)で終了する。
 現在の営業時間は午前10時~午後8時。入浴棟も含めた同16日(土)からの施設営業は、午前11時~午後6時となる。