晴れ舞台 思い乗せて 「NHKのど自慢」生放送 まちを活気づける歌声相次ぐ
令和8年5月5日付 7面
「NHKのど自慢」の生放送が3日、大船渡市盛町のリアスホールで行われた。大船渡開催は、平成25年以来13年ぶり。予選を通過した気仙内外の20組が、全国のお茶の間に十八番を披露した。同市での大規模林野火災から1年を迎え、さらに大槌町での林野火災は鎮圧したばかりとあって、まちを活気づける思いや全国から寄せられた支援への感謝を込める歌声も響き渡った。(佐藤 壮)
生放送は、NHK盛岡放送局と市が主催。500組を超える出場申し込みの中から、前日の4時間半にわたる予選会では約200組が挑み、本番に進む20組が決定した。事前に受け付けた観覧希望も1900組を超え、抽選を〝勝ち抜いた〟市内外の約900人が会場に入った。
ホール内のホワイエには、番組で用いるものと同じ形のかねが置かれ、観覧者が自由に鳴らし、本番前から〝合格〟が響いた。スタート前、渕上清市長は、大船渡市や大槌町で発生した大規模林野火災に触れ「元気なメッセージを全国に届けるため、大きな声援を」とあいさつ。出場者や観覧者は生放送独特の緊張感と高揚感も味わいながら、午後0時15分の本番開始を待った。
この日の司会は塚原愛アナウンサーで、ゲストは同市出身の新沼謙治さんと、和歌山県和歌山市出身の演歌歌手・田川寿美さん。おなじみのテーマソングに乗せて生放送が始まり、個性あふれる20組が思い思いに熱唱した。
最初に合格のかねを鳴らしたのは、駅伝のタスキをかけてステージに立った住田中学校の佐々木夢稀さん(2年)。本番後、「合格するとは思っていなかったが、歌っている途中で楽しくなった」と声を弾ませた。
大槌町吉里吉里在住の芳賀美紅さん(30)は、同町での林野火災で避難指示を受けたほか、栄養士として勤務する特別養護老人ホームの利用者が町外施設に避難するための対応に追われた。「この場に立てるのかも、あやしかった。でも、避難した利用者さんが戻ってきたあとに職員に相談したら、『頑張ってきて』と背中を押された。見てくれる利用者さんに元気を届けたいと思って歌った」と振り返る。
歌声を披露すると、会場全体が温かい拍手に包まれた。「職員や利用者さんに加え、懸命の消火活動があったからこそ、この舞台に来られた。感謝の思いでいっぱい」と語った。
令和3年で閉校した綾里中学校の卒業生で東北学院大学4年の千葉凛之介さん(21)は、中学校時代のジャージー姿で挑み、玉置浩二さんの『メロディー』を熱唱して合格を果たした。「かねが鳴った瞬間は『まじか』と驚いた。林野火災で友人や親戚の家が被災し、綾里全体を盛り上げようと思った。自分が歌うことで感動を与えたいと思い、この曲を選んだ」と、充実感をにじませた。
「今週のチャンピオン」は、EGO─WRAPPIN’の『くちばしにチェリー』を響かせた盛岡市在住の中学校教諭・山岸瑞穂さん(37)。会場全体が祝福ムードに包まれる中で記念品を受け取り、番組フィナーレを飾った。
気仙管内の中学校に赴任経験があり、持ち前の歌唱力に自身のさまざまな思いを込めた。「気仙には、本当にお世話になった。先生や生徒に恵まれた。気仙があって今の私がある。夫も大船渡出身で、息子が生まれた感謝の思いも伝えたかった。チャンピオンになれたのは、うれしいのひと言」と話していた。
会場は歌声だけでなく、新沼さんと出場者との軽妙なかけ合いなどで、終始盛り上がりをみせた。観覧で訪れた宮城県気仙沼市の内海美枝子さん(79)は「番組は毎週見ているので、初めて当選してうれしかった。足腰が不自由だが、スタッフの皆さんには優しく誘導していただいて楽しめた」と笑顔を見せていた。
気仙での「のど自慢」は、一昨年5月に陸前高田市高田町の奇跡の一本松ホールで開催された。リアスホールでは平成21年、同25年に続き3回目。この日の放送は、インターネットで視聴できる「NHK ONE」では、10日(日)まで配信している。






