今月から大規模修繕 陸上展示5年目の千石船「気仙丸」 風雨や紫外線で船体に傷み 木材部分の保護に椿油活用へ 

▲ 陸上展示開始から5年目の気仙丸。今月から大規模な修繕が本格化する

 大船渡市の千石船「気仙丸」利活用推進協議会(会長・米谷春夫商工会議所会頭)は今月から、大船渡町のおおふなぽーと付近に陸上展示している気仙丸の大規模修繕を本格化させる。令和3年10月の展示開始以降、風雨や紫外線にさらされ船体の傷みが進む中、防水シート施工や腐食した木材の保護を行う方針。木材の保護には、気仙で生産され、抗酸化作用がある椿油を活用し、気仙の船大工が手がけた技術と誇りを継承する。(佐藤 壮)

 

 平成3年に完成し、翌年の「三陸・海の博覧会」協賛出品後、大船渡湾内で係留されていた気仙丸は、液体ガラス塗装を施し、令和3年10月から陸上展示が始まった。路上から見上げるだけでなく、同協議会では、見学やガイド希望にも対応。近隣で開催される産業まつりに合わせた船上開放に加え、昨年度は夜ならではの景観を楽しむ「ナイトツアー」も企画するなど、幅広い世代の来訪を促す取り組みを進めている。
 その一方で、風雨や紫外線で船体の老朽化が進み、特に船室の「屋根」ともいうべき甲板部分からの浸水が深刻な問題になっている。傷みに対しての修繕や保護が間に合わなければ、船上での見学が不可能になる状況も予想される。
 建造を担った大工集団「気仙船匠会」は高齢化もあって昨年5月に解散。存命のメンバーも少なく、木造帆船技術の継承を考えても、〝物言わぬ語り部〟である気仙丸の維持は欠かせない。同協議会では、地域の誇りであり続けてきた気仙丸や、建造に関する歴史文化そのものが失われる危機感を抱く中、令和7年度に保全プロジェクトを本格化させた。
 昨年10~12月にクラウドファンディングに挑戦。目標金額300万円に対し、地元内外から316万円が集まった。さらに、協議会に直接46万円の寄付が寄せられた。
 この支援を財源とした大規模修繕は、今月から本格化。船尾側に位置する船室の「屋根」部分に相当する甲板に防水シートを施工し、船室への雨水侵入を防ぐ。シートと木部が密着しないような構造とする。
 道路から見上げた時にはシートは視界にほぼ入らないほか、シートそのものも木材に近い色にするという。6月の梅雨入り前には作業を完了させることにしている。
 木部保護に向けた作業は、山形県にある東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターの伊藤幸司教授らにも相談しながら進めている。その中で、水をはじく素材として、抗酸化力が高い椿油に着目した。陸前高田市竹駒町の石川製油が製造する椿油を購入し、腐食が進んだ部材や塗装がはがれている板面などに塗り、経過を観察しながら継続的に取り組む。
 作業には、子どもたちをはじめとした住民参加もアイデアとして挙がる。食用や美容面にとどまらない椿油の効用をアピールし、地元産のツバキの種を積極的に集めるきっかけづくりにもなりそうだ。
 クラウドファンディングや修繕業務に携わり、ガイド役として優れた建造技術や歴史も伝える大船渡商議所の今野顕彦さん(43)は「地元の名産である椿油を用いて保護を行うことは、歴史文化を伝えるストーリー面でもいい効果が生まれるのではないか。陸上展示されている大型和船の保全に取り組む動きは、全国にもそうない。効果を積極的に発信したい」と期待する。
 今後の保存や利活用に向けては、降雨や紫外線を防ぐために気仙丸を覆う屋根をかける必要性は変わらないという。同協議会では、長期的な視点での展示・保存のあり方も引き続き検討する。