開店15年 感謝と不安交錯 産直はまなすで23、24日に記念イベント 運営に課題抱え迎える節目 あす震災発生15年2カ月

▲ 「開店15年を迎え、本当に感謝です」と、自慢の野菜苗を眺めながら語る戸羽さん

 陸前高田市米崎町の産直はまなす(細谷忠広代表)は22日(金)にオープン15年の節目を迎え、23(土)、24(日)の両日、記念の感謝祭を開く。東日本大震災後誕生した地元密着の小さな産直は、市内外に多くのファンを持つが、生産者の高齢化や気候変動に伴う収量減などで売り上げが落ち込み、運営は年々厳しさを増す。あす11日で震災発生から15年2カ月。若手農家の出品増など明るい材料もあり、「これからの農業者の受け皿をなくすわけにはいかない」と踏ん張り続けているのが施設の実態で、運営に奔走する関係者は地域や全国の支援者に支えられてきた歩みに感謝しつつ、見通せない先行きに不安を募らせている。(高橋 信)

 

 屋外のテント一面に置かれたパプリカ、トマト、ブロッコリー、ナスなどの野菜苗。産直はまなす恒例の「苗っこ市」が6日に始まり、多くの人が訪れている。
 8日に来店した大船渡市の70代女性は「野菜苗は『はまなす』からしか買っていない。気軽に来ることができていい。家庭菜園が楽しみ」と話した。
 「県外からもわざわざ来てもらったりする。本当にありがたいこと」。事務局の戸羽初枝さん(64)が苗を見渡し、ほほ笑んだ。
 同産直の看板商品である野菜苗。今季は大半が20~40代の農業者が手がけたものという。「80代のじいちゃん、ばあちゃんや定年帰農者、若手など、規模が小さくても農作物を出せる『ハードルの低さ』がうちの強み。早速多くのお客さんに来てもらい、うれしい」と喜ぶ。
 産直はまなすは平成23年5月、女性農業者グループ「七草いつまでも夢を見る会」のメンバーを中心とする40~86歳の農業者12人が立ち上げた。プレハブの売り場には自慢の産品を並べ、季節に合わせたイベントを定期的に開催。震災の津波で壊滅的な被害を受けたまちから、1次産品を通じて元気を発信し続けた。27年には隣に農産加工場「はまなす農園キッチンかせる」を増設した。
 戸羽さんは、母親が「夢を見る会」の会長だったつながりから「手伝って」と声をかけられ、開店1カ月前の準備から関わり始めた。津波で市職員の長男・究さん(享年24)、市非常勤職員の長女・杏さん(同23)を亡くし、絶望の底にいた時期だった。
 「よく知る〝ばっぱ〟たちから『電気はどうすれば通るんだ』などと頼まれ、自分も余計なことを考えなくて済むからだったのか、一生懸命準備に当たった」と振り返る。
 はまなすには戸羽さんの存在を知り、交通事故で子どもを亡くした家族が遠方から訪れることなどもあった。県外から同市に移り住み、同施設で働く若者をわが子のようにかわいがった。「人との出会い、ご縁に私も支えられた。はまなすがなければ、今どうしていたか全く想像できない」と言い切る。
 「でも、この先を思うと不安が大きい」と表情を曇らせる。震災の月命日に合わせて販売する切り花は、十三回忌を過ぎた頃から売れ行きが鈍くなり、主力のリンゴは生産者の高齢化に、高温の影響が拍車をかけ、収量が低下。経営はかんばしくないが、閉業すれば地元農家が販売場所を失うこととなるため、近年は事業収支の赤字分を細谷代表との2人で負担する苦しい状況が続いているという。
 市内にある他の産直も運営上の課題を抱え、戸羽さんは「このままでは陸前高田の農業が衰退してしまう」との危機感を伝えようと、昨年、佐々木拓市長に市長直送便を送り、懇談の場を設けてもらった。「それぞれの産直の強み、特色を生かしながら、中心市街地でかつての『五の市』のような朝市ができないか。小規模な農業者の活躍する場、販売する場を、行政にも一緒になって考えてもらえたら」と求める。
 22日は発足メンバーを集め、ささやかな食事会を行い、節目を祝う予定だ。初代代表の松本タミ子さん(84)=高田町=は「あっという間の15年。さまざまな人に大変お世話になった」と話し、戸羽さんも「地域の方々にも感謝の気持ちを伝えたい」とする。
 感謝祭では採れたてランド高田松原などが出店し、農作物や加工品を販売する。23日は紅茶作りの体験会、24日は餅まきを行う予定。開催時間は2日間とも午前9時~午後5時。
 問い合わせは、産直はまなす(℡47・4720)へ。