大船渡市長選告示まで残り半年── まだ静観ムード、選挙の争点は 渕上市政の評価、林野火災の復旧・復興…
令和8年5月17日付 1面
任期満了に伴う大船渡市長選の告示まで、残り半年を切った。1期目の現職・渕上清氏(67)=盛町=は態度を表明していない。新人の出馬表明もなく、静観ムードが広がる。今市長選の争点は渕上市政の評価や、大規模林野火災からの復旧・復興への取り組みなどが考えられる。また、物価上昇の影響を受ける地域経済活性化策や、人口減少下での持続可能な市政運営、内陸部との格差解消も急務だ。当面は、現職の態度表明のタイミングをにらみ、水面下の駆け引きが続くとみられる。(佐藤 壮)
今市長選は、11月15日(日)告示、同22日(日)投票で行われる。昭和27年の市制施行から数えると通算21回目。三陸町との合併後は7回目、東日本大震災後は4回目となる。
任期満了日が12月2日となった昭和61年以降の市長選は、いずれも11月中旬から下旬に告示・投票の日程が組まれた。令和4年11月27日投開票の前回市長選は、3期12年務めた戸田公明前市長が勇退した中で行われ、史上最多の5人が出馬する混戦となったが、渕上氏が有効投票数の38・7%に当たる7578票を獲得して初当選を飾った。
現段階で渕上氏本人から市長選への態度表明はなく、その時期も明らかにしていない。先月の記者会見では「時期については、決めかねているのが率直なところ」「令和8年度に進めることになっている施策を着実に行っていく」と述べた。4年前の前回選は、5月に出馬表明を行った。
同氏の後援会(今野武義会長)は今年3月、再選出馬を要請。今野会長は「表明のタイミングは市長の考えを尊重したい。ただ、出馬する前提でこちらも準備を進める。すぐ動けるようにしなければ」と語る。
渕上市政1期目への評価に加え、継続的な市政運営を期待する支持者が多い。半面「新人の立候補表明がない中で、動き方には難しい部分もある」「前回選では得票数が投票数の過半数だったわけではない。選挙になれば、簡単に勝てるとは限らない」といった警戒の声も聞かれる。
選挙が近づく中、争点として考えられるのは、4年前に訴えた政策の実現度や、その後の市政運営の評価だ。前回選は特に、新人だけの出馬とあって各候補者は課題解決や地域振興を訴える「政策選挙」を重視した。
このうち、渕上氏は「未来への3本柱」として▽地元の産業を強く元気に▽若者の活躍でみんな笑顔に▽支えあってみんな幸せに──を掲げた。さらに、後援会資料では「大船渡を岩手随一の沿岸都市に、こどもは市民みんなの宝もの」と、保育料無料化の実施や在宅高齢者移動手段確保、大船渡港湾と県央部直結の高規格道路建設、不漁時の漁業者支援、想定外と言わせない防災体制構築も強調した。
1期目の市政運営では、7年度から保育料完全無償化を実現。サン・リア内に屋内公園機能も備えた市こども家庭センターを開設した。また、一般国道107号整備促進と大船渡内陸道路(仮称)高規格化実現を訴える期成同盟会も立ち上げ、要望活動を強化している。
一方、在宅高齢者の移動手段確保に関しては、一昨年から昨年にかけて市が開催した市政懇談会やグループインタビューで、公共交通の充実を望む意見が目立った。水産分野では、定置網で水揚げ量が大きく減少するなど、主力魚種不振の影響が広がりつつある。
大規模林野火災の復旧・復興に向けては、今後本格化する大規模な森林再生事業の進展が鍵となる。被災した住民の住宅再建支援やコミュニティー再生などの重要性も増す。
今年4月末現在で3万1097人の市の人口は毎年700人前後のペースで減少し、次任期中には3万人割れが予想される。既存事業の大胆な見直しを含めた人口減少に対応する市政運営や、地元外から人を呼び込む施策充実も求められている。
地域課題が山積している一方、現段階で新人の出馬表明はない。令和4年の前回選は、現職が勇退を表明する前の5月の段階で、すでに新人3人が名乗りを上げていたほか、現職と新人の一騎打ちとなった平成30年の前々回選は2月の段階で両氏とも表明していただけに、今市長選を巡っては静観ムードが際立つ。
過去の市長選に出馬経験がある市民からは「渕上市政に『ノー』を示したい人は必ずいる。無投票が一番いけない」といった声も出ており、今後の動向が注目される。
同市長にはこれまで、渕上氏を含め10人が就任。2期目を目指した現職は、過去の市長選でいずれも当選を果たした。
無投票で終わったのは、昭和27年の第1回と同39年の第4回、同55年の第9回の計3回で、初回を除き現職が再選。現職が新人に敗れたのは、平成6年の第13回だけとなっている。
今年3月1日現在、同市の有権者数(18歳以上)は2万7519人(男1万3074人、女1万4445人)。前回選の投票当日有権者2万9301人と比べ、1782人少ない。





