「ふね遺産」に気仙丸 日本船舶海洋工学会が認定 建造による多様な価値評価

▲ 「ふね遺産」への認定が決まった気仙丸(平成26年の湾内航行)

 大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)が所有する木造千石船の復元船「気仙丸」が、公益社団法人日本船舶海洋工学会から「ふね遺産」に認定された。江戸海運を支えた千石船をはじめ大型木造帆船である弁才船の構造・工法を踏襲し、平成時代に木造帆船が建造された先行事例としての意義などを評価。商議所では「朗報」と喜び、今後の保存・利活用充実への弾みにしたい考え。認定式は7月に東京都内で予定している。(佐藤 壮)

 

大型木造帆船復元の先駆け 今後の保存・利活用に弾み

 

 

 ふね遺産は、歴史的で学術的・技術的に価値のある船舶や、関連設備を認定して広く社会に周知し、文化的遺産として次世代に伝えていく目的で同学会が事業を続けている。
 第10回の認定に向け、昨年10~12月に候補を募集。今年4月の審査委員会を経て、気仙丸を含む4件が決定した。認定式は7月14日(火)に東京都港区のビジョンセンター浜松町で開催される。これまで、第10回分を含めて60件が認定され、現存船は気仙丸を含む27件となっている。
 気仙丸は、江戸時代に気仙と江戸、九州地方の交易に活躍したとされる千石船の歴史を伝える復元船。長さ18・70㍍、幅5・75㍍、高さ5㍍。帆柱の高さは17㍍を誇る。
 平成4年に開催された「三陸・海の博覧会」での展示公開に向け、船大工を中心とした気仙船匠会(昨年解散)によって建造された。伝統的な弁才船の構造・工法を踏襲した建造に向け、20分の1模型の組み立て工程や工法の検証などから多くの知見を得た。模型は現在、大船渡商議所内に展示されている。
 認定では、気仙船匠会の指導で新潟県の「白山丸」、大阪府の「浪華丸」、青森県の「みちのく丸」が建造されたことなど、後年に続いた弁才船建造の先行事例としての意義も挙げる。そのうえで「江戸時代の海事史研究の資料としてだけでなく、日本における弁才船復元の嚆矢として、また気仙地域の木造船建造技術を今に伝える存在として極めて高い価値と希少性を備えている」と評価した。
 気仙丸は三陸・海の博覧会での展示後、赤崎町の蛸ノ浦漁港で係留され、平成23年の東日本大震災時は大津波からの流失を免れた。同26年には、大船渡湾内で畳85枚もの大きさに相当する白い帆を張って航行した。
 その後、老朽化が進み、同商議所などが気仙大工の技術や歴史継承を見据えて改修に乗りだし、令和3年秋からおおふなぽーと付近で陸上展示されている。同商議所が中心となって翌年に設立した利活用推進協議会では、4年度にも認定に向けた候補申請を検討した経緯がある。
 当時は「復元船」としての申請で、実際にどの船を再現しようとしたのかといった点で資料収集に苦戦し、同年は申請を見合わせた。その後も気仙丸の設計に関わった専門家などと面会し、情報収集を重ねた。
 7年度に入り、船大工で建造に携わった気仙船匠会の菅野孝男副会長=陸前高田市気仙町=が建造当時の資料を見つけた。建造時に発揮された船大工の技術や、完成後の多方面にわたる効果など、これまで明らかになった多様な価値を取りまとめて申請した。
 気仙丸は陸上展示開始から5年目に入り、近く大規模修繕が本格化する。風雨や紫外線にさらされ船体の傷みが進む中、防水シート施工や腐食した木材の保護を行う方針。木材の保護には、気仙で生産され、抗酸化作用があるつばき油を活用し、気仙の船大工が手がけた技術と誇りを継承する。
 商議所や同協議会では、認定による知名度や関心の向上を生かし、建造技術や歴史的価値に即した利活用を見据える。商議所では「気仙における海の文化、木造船建造技術を伝える地域資源として、次世代へ継承する取り組みを進める」としている。