アサリ養殖 成果と課題共有 越喜来漁協が報告、試食会 実入り良好、安定生産へ(別写真あり)

▲ 試験養殖したアサリを試食する関係者ら(電子新聞に別写真あり)

 大船渡市の越喜来漁業協同組合(舩砥秀市組合長)は29日夜、大船渡町のカフェ「アンテンヌ」(平山朗店主)で、令和4年度から越喜来湾の漁場で試験養殖に取り組んでいる垂下式アサリについての報告会とその試食会を開いた。同漁協組合員の生産者や水産関係者らが出席し、約5年間の取り組みで得られた成果と課題を共有。出席者らは、生産者が苦労を乗り越えて育てた肉厚なアサリを使った料理も試食し、今後の安定生産や新たな養殖種としての可能性拡大に期待を込めた。(菅野弘大)

 

 近年続いていた海水温の上昇は、気仙を含む本県沿岸の浜にも大きな影響を及ぼした。養殖生産物も高水温による貝類の死滅などが相次いでいた中、釜石市の県水産技術センターでは、比較的高い水温の中でも生存できる新たな養殖種としてアサリに注目。養殖物の生産量回復、維持や漁業者の所得向上につなげようと、人工種苗の生産試験と並行して、4年度から越喜来、三陸やまだ、新おおつちの3漁協が参加して試験養殖がスタートした。
 報告会は、現時点での結果と手応え、課題等を共有し、今後の展望を確認する場として初開催。越喜来漁協と同センター、大船渡水産振興センター、市水産課、生産者ら11人が出席した。
 主催者を代表して、同漁協の前田功総務課長が「アサリの試験養殖は、組合としても初めての試みで、ゼロからの試験養殖を行っていただいた生産者の方々は大変な苦労をされたことと思う。組合でも、できる限り生産者の取り組みに協力していきたい」とあいさつ。続いて、県水産技術センター増養殖部の山口正希部長が、技術報告として説明を行った。
 山口部長は、アサリの種苗生産や試験養殖に至った背景から、種苗量産技術の開発の実績と今後の見通し、試験養殖で用いた手法と成果、越喜来湾における取り組み状況を紹介。種苗生産は、同センターから県栽培漁業協会に技術移転を進め、7年度は殻長2㍉の稚貝89万個を作出したとし、本年度は大型種苗を効率的に作出する手法の開発を行う見通しを示した。
 越喜来湾での試験養殖は、アサリの稚貝とアンスラサイト(無煙炭)を一緒に袋に入れ、丸かごに収めて海中に垂下。定期的にサイズを振り分ける分散作業と、アサリにとって有害な生物や付着物を落とす「淡水浴」を施し、成長度合いを確認する方法で進めた結果、令和5年5月に殻長3~6㍉だった4年産の稚貝が、今年2月には出荷基準サイズを超える殻長25~40㍉まで成長した。
 同部長は「継続してアサリ養殖を行っていくには、三陸地域、そして垂下式で作られたアサリにどう付加価値を生み出して販売していくかが大切。今後、良いものを出荷できる体制が作れるよう、協力して進めていきたい」とまとめた。
 さらに、「生産者の声」として、アサリの試験養殖に取り組んできた漁業・里見和哉さん(40)、知哉さん(35)兄弟が発表した。この中で、和哉さんは、過酷な分散作業などの苦労を振り返りつつ「関係者に作業を手伝っていただいた。みんなで苦労して作ったアサリをこうして食べて、自分たちの手で作ったことを分かち合えるのがうれしい」と語った。
 試食会では、越喜来湾産アサリを使った「アサリと春野菜のガレット」と「シードル蒸し」の2品が提供された。料理のコンセプトについて、平山店主(64)は「養殖アサリの強みである身入りの良さと、砂噛みがないところを踏まえ、アサリ単品のシードル蒸しに加え、当店自慢のガレット、旬の野菜と合わせてみた」と説明。試食した関係者からは「しっかり身が詰まっていて驚いた」「おいしさに感動した」と、アサリの味や調理での生かし方を絶賛する声が寄せられた。
 里見さん兄弟とともに、アサリ養殖に取り組む漁業・岡田薫省さん(56)・真由美さん(52)夫妻も出席。薫省さんは「国産アサリが減少している状況で、養殖の話をもらった時は使命感みたいなものを覚えた。黒潮が離れ、海の環境も少しずつ戻っていて、アサリの今後の成長にも変化が出てくると思う。養殖に関する技術的な部分は、一定程度の知識と経験をいただいたので、本年度も続けて取り組み、最終的には販売まで行ったうえで、結果を検証したい」と意欲を見せた。
 アンテンヌでは、6月1日(月)~9日(火)の期間限定で「越喜来湾産アサリと春野菜のガレット」(税込み1000円)を提供。3(水)、4(木)、5日(金)は定休日や貸し切り営業のため除く。営業時間は午前11時~午後5時。