「最後まで心込めて営業を」 五葉温泉 29日の閉館まで1カ月切る 常連客ら名残惜しむ
令和8年6月6日付 1面
大船渡市日頃市町の「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」は、29日(月)の閉館まで1カ月を切った。平成12年にオープンし、26年間にわたって五葉山の登山客や市内外の人から親しまれた天然温泉施設。運営する五葉地域振興㈱(柏﨑明彦代表取締役)は「最後まで心を込めて営業する」とし、地域内外からの来館を呼びかけている。同社は閉じたあとの建物の承継事業者を探している。(高橋 信)

施設には連日、常連客らが訪れている
鷹生ダムの五葉湖そばにある同施設。5日は市内外から常連客らが訪れ、ゆっくり湯につかりながら名残を惜しんだ。
釜石市唐丹町から訪れた木村克子さん(91)、小池えりかさん(65)の親子は入浴後、館内で購入したのり巻きなどを和室で味わった。
小池さんは「ここの露天風呂が大好きで、車で50分ほどかけて年に数回来ていた。地元の加工品などお土産品も良かった。なくなると聞き、仕事の休みを使って来た」と残念がる。施設名が記された割り箸袋は自宅に持ち帰り、保管するといい、「とても好きな施設だし、私のように市外から来ている人も多いと思う。誰か運営する人が出てくれればいい」と願った。
五葉地域振興の前身会社・五葉温泉㈱は、平成8年7月に設立。11年に現在の社名に商号変更し、12年春、同施設をオープンさせた。
泉質はpH値(水素イオン濃度指数)10・3のアルカリ性で、「美肌の湯」としても知られる。五葉山麓の景観が魅力の露天風呂も人気を集め、東日本大震災や大規模林野火災発生時は被災者らを受け入れ、無料で温泉を提供した。
地域に密着した運営で親しまれた一方で、入浴客数は人口減などを背景に減少。震災後、7万人台で推移してきた年間客数は、新型コロナウイルス禍を機に5万人台に落ち込んだ。近年、全国的にツキノワグマの出没が相次ぎ、県内外でクマに襲われる人的被害が出ている事態も、自然豊かな場所にある同施設にとって〝逆風〟となった。
昨年春に入浴料の値上げに踏み切り、窮状をしのいできた中、物価高騰の長期化に加え、中東情勢の緊迫化で湯を温めるための重油などが値上がりし、経営が悪化。燃料代や電気代をはじめとする維持・管理費の負担が軽くなる見込みがないまま経営を続けるのは困難として、施設を閉じる苦渋の決断を下した。
館内の食堂は食材の仕入れの関係から、先行して5月15日に営業を終了。翌16日からは施設の営業時間を3時間短縮している。
入浴料は通常1000円から、800円に値引き(小学生は100円引きの300円)。「風呂の日」の26日は、さらに300円引きの500円で入ることができる(小学生は250円)。
営業は29日までだが、社会情勢の影響で重油などが確保できなければ、閉館日を前倒しする場合がある。
柏﨑代表取締役は「今も連日、お客さまに来ていただき、心から感謝している。開業からの歴史を踏まえれば非常に心苦しいが、閉館を決めた。サービスには限界があるが、従業員一同心を込めてお客さまを受け入れたい。地域のためにも承継先を引き続き探していく」と話す。
施設は火曜定休。営業時間は午前11時~午後6時。問い合わせは、同施設(℡22・5400)へ。





