就任から1年2カ月 藤枝副市長に聞く 森林再生と港湾振興に注力

 県庁出身で、昨年4月に大船渡市の副市長に就任した藤枝修さん(53)。市政をけん引する渕上清市長や市職員らとともに、一丁目一番地の課題である大規模林野火災からの復旧・復興、持続的なまちづくりなどに取り組む中、今年4月、出身地の大槌町が大規模な林野火災に見舞われた。着任後の所感や今後推進したい取り組み、古里への思いなどを聞いた。

 ──大船渡市での職務を振り返り、率直な所感を。
 藤枝 当初は副市長という未経験の立場に戸惑いがあったが、就任後はじっくりと振り返る時間もないまま駆け抜けてきた感覚。あっという間で、それだけ濃い1年だった。職員と一緒に検討を重ね、いい形で施策をまとめられた時は素直にうれしかった。
 ──大船渡で暮らし、仕事をする中で感じる魅力と課題は。
 藤枝 消防団活動や地域単位の公民館活動などが、これまで接してきた自治体よりも抜きんでて、しっかりしている。互助の精神が根付いていると肌で感じた。
 4月下旬までに市内11地区すべてで地区運営組織が発足した。持続可能なコミュニティー形成に向け、これから動きだすという段階ではあるが、そもそも地区運営に関して地域内で議論しているということ自体が印象的だった。
 コミュニティーや地域の規律を大事にしながら、若い世代が自分たちの視点を生かし、さまざまなことに積極的に取り組めるような雰囲気がもっと広がればいいなと思う。
 ──林野火災からの復旧・復興、森林再生分野で力を入れてきたことは。
 藤枝 各担当部署の仕事を上手につなぎ合わせるということを意識してきた。オーケストラは一人一人の演奏が上手でも、そろわないと一つのきれいな音楽にならない。市役所内でも森林整備は農林、被災者支援は福祉、産業振興は商工と、セクションは分かれるが、バラバラにならないような支援策を構築できるよう気を配ってきたつもりだ。
 ──令和8年度、特に力を入れたいことは。
 藤枝 森林再生と大船渡港の振興に向けた取り組みを推し進めたい。
 国、県など関係機関の協力を得て、3月に森林再生計画を策定することができた。本年度は国の激甚災害指定に基づく具体の森林災害復旧事業に大きく踏み出したいと考えている。労働力の確保、被災木の活用・流通など課題は山積みだが、まず被災した私有林における所有者間の境界の確認が、事業発注に入る前の大きな壁となる。
 被災面積3370㌶のうち、事業面積は1300㌶近くと非常に広大。境界確認だけで、時間を要するだろうが、この目前の壁をなんとか乗り越えたい。平成以降最大の林野火災からの復旧であり、当初から道なき道を切り開いてきた。森林所有者の理解や協力をいただきながら、最大限努力していく。また昨年9~10月、所有者向けに実施した復旧事業活用に関する意向調査をもう一度行いたい。
 港湾の振興に関しては、限られた貨物を他の港と奪い合っても大きな発展は望めないと考えている。太平洋セメント㈱大船渡工場を核に、リサイクル素材が入った製品を、経済発展している海外に輸出していくといった展開を目指していきたい。まちの特性、強みを生かし、さらに伸ばしていけるよう検討を深めたい。
 ──大槌町は、大船渡市と同様に東日本大震災や林野火災に襲われた。三陸沿岸の復旧・復興への思いは。
 藤枝 大槌も震災復興が進ちょくし、住まいの高台移転などが進んだ段階で、今度は山からの火災に遭った。大変いたたまれない気持ちになった。
 三陸沿岸は時代の変遷とともに、人口、産業構造、気候、いずれも大きく変わってきた。そうした状況下で未曽有の災害が起き、被災前と同じような対応、取り組みで、期待通りの発展を求めるのは現実的に困難だと思う。
 震災、そして林野火災からの復旧・復興の過程で、新しい環境の変化に柔軟に対応できるような地域となってほしい。私自身に大きなことができるわけではないが、次の世代が希望を持てるよう、自分なりに大船渡の力になれればいいなと思っている。
(聞き手・高橋 信)

 

藤枝修(ふじえだ・おさむ) 副市長(53)

 平成8年旧建設省(国交省東北地方整備局)入省。9年県職員採用。19年JR東日本(東日本旅客鉄道㈱)出向、27年大槌町産業振興部長、29年文化スポーツ部ラグビーワールドカップ2019推進課主任主査、令和2年県議会事務局議事調査課議事管理担当課長、4年商工企画室管理課長、6年産業経済交流課地域産業課長。拓殖大卒。大槌町出身。