視点/津波注意報・警報に伴う避難指示区域見直し㊦ 独自ルールの共有・周知を 「積極的に逃げる」変えぬ対応も
令和8年6月12日付 1面
昨年12月12日、青森県東方沖で発生した地震に伴う津波注意報発表を受け、授業中だった大船渡市大船渡町の大船渡小学校では、児童が高台に位置する大船渡中学校まで徒歩で避難した。大船渡小は、平成23年の東日本大震災津波で校庭と校舎1階が浸水し、現在もその校舎を利用しているが、堤防や国道45号よりも山側に位置し、今月から注意報・警報発表時は避難指示の対象外となった。
大船渡小の堀井秀郷校長は、保護者や地域の意見を聞きながら、さらに対応の見直しを進める方針を掲げつつも「子どもたちの『大きな揺れがあったら避難行動をとる』『高台に逃げる』という習慣はつないでいきたい。警報となれば、避難を考える。いざという時には『大中だぞ』というのを、空振りでも無駄でもいいから残しておきたい」と話す。
東日本大震災の復旧・復興事業で整備されたかさ上げ地に施設を構える、大船渡町の㈱キャッセン大船渡。須崎川を挟む形で並ぶ「モール&パティオ」と「フードヴィレッジ」に入る約30店舗を対象に今月、新たな避難行動を定めた。「注意報発表時は警戒・避難準備、津波警報発表時は営業をやめて避難」とする。さらに、津波注意報段階での避難も安全確保につながることから制約はしないとしている。
理由には▽震災の津波浸水被害を受け、市が「第1種災害危険区域(大規模津波時浸水区域)、非居住区域」に指定している地域に立地している商業施設であり、防災を徹底するエリアに位置する▽津波警報から大津波警報などに変更になる可能性もあること▽『営業をやめて避難』を規則化することで、不測の事態に対し、すべてのテナントを守ることを念頭にしている──などを挙げる。
注意報・警報発表時は防災行政無線やエリアメール、メディア報道などで落ち着かない状況が続く。市は発令時には市全体として警戒態勢をとるとともに、市災害対策本部地区本部となる施設などで不安を感じる住民らの避難を受け入れることにしている。
また、沿岸部の防潮堤に整備された陸閘は注意報・警報発表時に自動的に閉鎖される。大船渡町内では市魚市場周辺の県道沿いにもあり、閉鎖によって車両の通行や産業活動に一定の制限を受ける。
今年4月20日夕方、気仙を含む県内の太平洋沿岸に津波警報が発表された。大船渡町の県交通国道下平バス停付近から盛町の大船渡警察署前の通行が規制され、猪川町の県合同庁舎前交差点から大船渡町方向への直進も制限。帰宅時間と重なり、長い車列ができた。JR大船渡線BRTで帰路に就いていた高校生らが乗務員の指示に従って市指定の第1避難場所へ向かう姿も見られた。
今回の見直しで対象外となった地域の住民や施設従事者・利用者は、どのような「備え」をするべきか。要支援者に取るべき対応は。各地域にある自主防災組織に求められる役割は──。こうした行動のあり方を丁寧に示していかなければ、住民や事業者関係者の不安、戸惑いの解消にはつながらないのではないか。
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市は今年3月、初の事業者向け津波避難等防災対策研修会を開催した。計画策定は法律に基づき、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震により30㌢以上浸水すると想定されている地区の事業者が対象となっている。3月段階で184事業所が作成義務者となり、すでに多くが避難計画をまとめている。
研修では、避難開始の判断タイミングとして、地震の揺れが続く間に津波警報が発表された場合は「浸水域の場合は、まずは屋外への避難」といったアドバイスが送られた。
従業員の役割分担に関しても、参加者は「危険と思ったら、(役職の)上下関係は関係なく避難する」なども確認した。
さらに、避難時の判断基準など、災害時の対応は必ず来訪者が分かる場所に明示する指針も示された。今月以降、避難警報時は、市による対象区域が大幅に縮小されることで、各事業者が独自判断基準を分かりやすく発信する重要性が増す。例えば、入り口に張る統一的なステッカーのようなものを用意する動きや、それを行政が支援する取り組みがあってもいいのではないか。
避難指示区域の見直しで、過去の津波浸水区域では「変わること、変わらないこと」が出てくる。積極的な避難行動だけでなく、警戒態勢をとりながら施設運営を継続するなど、置かれた立場や実情を踏まえた対応を取ることになる。それぞれの適切な運用だけでなく、市全体として各事業所などの対応や指針を共有する環境づくりも求められる。






