「再生のサイクル」一歩ずつ 伐採跡地で造林着手 大規模林野火災 森林災害復旧事業で(別写真あり)
令和8年6月21日付 1面
大船渡市大規模林野火災で被災し、市が森林災害復旧事業の先行地と位置づける三陸町綾里熊之入地内の市有林約19㌶で、伐採後の跡地造林が進められている。黒く焦げた切り株が残る中、スギの花粉症対策品種を1本ずつ手作業で植え付ける地道な作業が続く。同事業では1200㌶超を計画するなど、完了までには膨大な作業が待ち受けるが、関係者は現場で動きだした「再生のサイクル」に手応えを感じながら、さらなる推進や効率化を誓う。(佐藤 壮)
現場は不動滝の入り口付近から、林道熊之入線を綾里峠方向に約3㌔上がった先の急傾斜地に広がる。奥地に位置する急傾斜地であり、今後の事業の流れを把握する観点などから、市は「モデルケース」と位置づける。
昨年度、市から委託を受けた気仙地方森林組合(古内文人組合長)が業者に発注し、10月中旬から搬出路などの整備に入り、11月に人工林部分の伐採が本格化。伐採を終え、地ごしらえを経て、今月からスギの植え付けが始まった。
市は今月20日、報道各社に作業現場を公開した。黒く焦げた跡が残る切り株などがある茶色の地肌に、高さ35㌢程度の少花粉スギの苗が点在する。
現場では15人ほどがコンテナ苗を背負って入り、手作業で1本ずつ植える。間隔は2㍍超で、1㌶当たりの植栽は2000本。事業地全体では3万8740本を計画し、7月までには終了するという。
地面に焼け焦げた木や葉、種が残っている影響か、スギの苗木以外の緑色は、あまり見られない。他の草が伸びていない分、今後はシカの食害が懸念されるという。事業地では本年度、防護網設置も計画。獣道を残しながら小区画で防護網を設ける「ブロックディフェンス」を導入する。
作業現場に入った古内組合長は「順調に推移していると思っている。火災現場なので、木を倒すのも非常に危険な場所があった。今後の植林は、作業員の方々の安全が一番。人材不足の状況はあるが、県内外からの作業員にも手伝ってもらえれば。県森林組合連合会の方々とも協議したい」と話した。
森林再生に向け、伐採木の流通先確保も課題となっている。古内組合長は「われわれから見れば、焦げているのは幹の下の方で、上の方は使えると思っている。『チーム大船渡』を立ち上げ、利活用の検討を進めている。これまではバイオマス事業燃料としての利用が中心だったが、(建築用の)集成材などにも使われるようにしたい」と今後を見据える。
市林野火災対策局の松川伸一局長は「再生のサイクルが始まった。被害面積が大きいので、着実に作業を繰り返していく。私有地の事業地における境界の確認も、土地の所有者との大きな問題もなく順調に進んでいる。土地所有者や関係機関と協議をしながら効率化を図りたい」と語る。
国の激甚災害指定に基づく森林災害復旧事業では、被害木などの伐採・搬出、シカ食害対策を含む伐採跡地の造林、森林作業道の整備を行う。被災地全体では、伐採・搬出1248・7㌶、跡地造林1279・2㌶について、国の事業査定を受けた。期間は令和10年度まで。その後の下刈りも含め、森林所有者の負担はない。森林保険加入費用は、所有者の負担となる。作業路開設も含め、事業費は117億5772万円を見込む。
同事業では、熊之入地内の別の市有林3・5㌶でも伐採作業が進む。私有林の事業地のうち、まず赤崎町合足の約12㌶と、綾里の打越・小路の20㌶程度を選定し、合足では所有者による境界確認を終えた。所有者との協定締結や、森林経営計画の策定を経て、市は8月中には発注したい考えを示す。各事業地での着手までに要する期間を踏まえ、他区域の具体的なスケジュール設定も進めることにしている。






