調査成果を防災強化へ きょうまで大規模林野火災に学ぶ講演会 被災木の活用紹介も
令和8年7月16日付 1面
大船渡市主催の「大規模林野火災に学ぶ講演会」が15日、盛町のリアスホールで開かれた。昨年2月26日に発生し、三陸町綾里や赤崎町を中心とした延焼面積は3370㌶と、平成以降最大の林野火災となった中、大学や調査機関の研究者らが延焼拡大のメカニズムや建物火災の被害パターン、今後の森林への影響など、幅広い角度からの分析内容を解説。16日も講演を予定しているほか、被災木の活用事例も紹介する。(佐藤 壮)
大規模林野火災の復旧・復興に向けては、森林再生などに関する課題が山積。さらに、大船渡での事例は林野と市街地の境界領域に位置する「WUI火災」にあたるとされ、全国から駆けつけた消防・自衛隊関係機関などによる消火活動の経験・教訓を後世に伝える重要性が増している。
講演会は、昨年の経験を踏まえ、災害対応の検証や森林再生に関する課題・知見を共有し、今後の防災・減災対策の強化、森林再生の推進につなげようと開催。市内では今年1月に「突発科研費大船渡市山林火災研究グループ」(研究代表・桑名一徳東京理科大学創域理工学研究科教授)と市の共催による報告会が開催されたが、市主催の講演会は今回が初となる。県が共催した。
事前に申し込みを受け付け、県内外から約160人が来場。冒頭、渕上清市長は「市民生活や地域産業に深刻な影響を及ぼし、不安な毎日を過ごしたが決死の消火活動に感謝申し上げる。林野火災は一地域だけでなく、全国どこにでも起こり得る災害。今後の災害対応や森林再生を考える一助になれば」とあいさつした。
消防庁の齋藤健一特殊災害室長と、林野庁の諏訪幹夫森林整備部整備課長が祝辞。壇上では、桑名教授からグループとしてまとめた調査報告書が渕上市長に手渡された。
引き続き、桑名教授が林野火災時のリスク評価に関して講演。延焼拡大には極度の乾燥と強風が背景にあったとし、昨年2月は「ほぼ30年に一度の乾燥度」だったほか、市内では日中風速が上昇し、土壌も乾燥しやすい傾向を挙げた。
落ち葉や低木が燃焼する地表火は、道路で焼け止まっている場所が各地に散見される。一方、樹冠火は谷筋に沿って延焼する初期段階での発生を指摘。「火災によって風を呼び込み、さらに当時の強い西風が合わさり、延焼を加速させた」などと述べ、谷筋の上る方向への延焼時に突発的な延焼の急拡大が発生した流れにも触れた。
国土交通省国土技術政策総合研究所の岩見達也室長は、建物被害・避難行動の実態と検討課題を解説。住家の被害棟数が多かった三陸町綾里の港、赤崎町の外口両地域でも、1カ所から燃え広がったのではなく、さまざまな要因が考えられる点などを示した。
被害パターンとして▽すぐ近くの山林が燃え、その強い熱(放射熱)や火炎で延焼▽延焼した建物からの放射熱や火炎により、周囲の建物に延焼▽火の粉で建物に飛び火▽燃えやすい物置、簡易な構造物へ先に延焼し、その燃焼熱で建物に延焼▽山林が燃えて発生した火の粉で下草が燃え、下草から建物に延焼▽建物周囲の可燃物、生垣、植栽などに延焼し、その燃焼熱で建物に延焼──を挙げた。米国の全米防火協会がまとめた山火事から自宅を守るための可燃性の植生を避けるといった基準なども紹介した。
千葉大学の峠嘉哉准教授は「林野火災後の山林復興」をテーマに講演。乾燥度と林野火災の発生状況に関しては、過去30日間の降水量と林野火災の発生や延焼のしやすさには一定の相関性がある点などを説明した。
また、平成30年5月8日に出火した尾崎半島林野火災における被災森林の変遷も紹介。昨年から今年にかけての状況から、大船渡市での延焼区域でも今後数年で領域一帯で木々が枯死・危険木化する恐れも示した。
講演に合わせ、展示スペースでは林野火災の写真展示や被災木活用事例を紹介。林野火災時における消火活動や被災状況に関する写真展示に加え、県内の木工作家による被災木を活用した木工作品や家具などが並んだ。
このうち、北上市の木工作家・笠原悠貴さん(44)は今年確保したスギ材によるベンチを出品。「被災の影響はなく、木目がきれいでスギ自体の温もりが感じられる。丈夫な材であることを示すためにも背もたれを厚くし、三陸の稜線や海をイメージしたデザインにした」と話した。
講演会・展示は16日も午前9時30分からリアスホールで開催。展示は申し込み不要で誰でも見学できる。






