気球の放球実験実施へ 大船渡港湾口防南側 ロケット開発の企業が計画 29日~8月13日の間に
令和8年7月25日付 1面
大船渡市末崎町山岸地内の大船渡港湾口防波堤南側付近で今月下旬から来月中旬にかけ、ロケット開発を手がけるAstroX㈱(アストロエックス、本社・福島県南相馬市、小田翔武代表取締役CEO)が気球の放球実験を計画している。放球オペレーションの習熟や気球破壊装置の作動検証、回収作業の習熟、通信制御の検証が目的。市内では平成19年まで、三陸町吉浜に文部科学省・宇宙科学研究所などによる三陸大気球観測所が置かれ、観測用大気球の放球が行われており、海を背に上昇する姿が久々に見られそうだ。(佐藤 壮)
同社は、気球とロケットを組み合わせた空中発射システム「Rockoon(ロックーン)」の開発を進めている。気球で高度20㌔前後の成層圏までロケットを運び、空中で点火してロケットを発射する方式で、「宇宙開発で『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を取り戻す」をビジョンに掲げる。本年度中には、新型ロケットをつり下げた大型気球を放球し、サブオービタル(地上から出発し、高度100㌔程度まで上昇後、地上に帰還する方式)での宇宙空間到達を目指す計画だ。
一般的な地上発射のロケットが空気のある層からの脱出に多くのエネルギーを必要とする中、ロックーンは省エネルギー・低コストの技術として注目されている。発射台などロケット専用の地上施設が必要なく、移動式の設備や海上からでも気球の放球が可能になることから、ロケット発射の自由度が広がるという。
同社によると、放球する気球は直径約8㍍で、総重量は気球本体が約10㌔、積載物が約40㌔の計50㌔。上空4000~9000㍍で破裂させ、積載物はパラシュートで降下速度を低減させながら、沖合10~37㌔の海上に着水させる計画。専用船で浮遊機材を回収することにしている。
放球予定日は29日(水)~8月13日(木)で、気象条件が良好な1日を選ぶ。前日午後3時の気象予報に基づいて実施の是非を判断し、関係機関に連絡する。放球実施時間は午前4~6時。放球場所は湾口防波堤の南側に当たる。
爆発音は発生しない。事前シミュレーションで破裂・着水点が海上にあることを確認してから放球する。現地には、安全統括責任者を配置する。
大船渡での同社による放球は初めて。沿岸の地形や、放球場所となる用地の環境などから市の協力を経て選定した。放球場所の立ち入りは制限する一方、飛行する様子は湾内の広い場所で目にすることができそうだ。
日本は、気球が他国の上空を通過するリスクが低いといった地理的優位性もある。同社はロックーンによるロケット発射の年度内の成功、3年後の衛星軌道への小型衛星投入を見据え、需要拡大が見込まれる「宇宙輸送」の確立を進める。
観測用の気球打ち上げを巡っては、三陸町吉浜に昭和46年3月、日本で最初の実験恒久基地となる東京大学宇宙航空研究所付属三陸大気球観測所が開所し、同年9月に宇宙塵採集や気象観測を目的とした第1号の気球放球が行われた。
以降、文科省の宇宙科学研修所や独立行政法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大気球観測センター・三陸大気球観測所などとして平成19年まで放球が行われた。こうした縁から、大船渡市はJAXAの施設を置く市町による「銀河連邦共和国」の構成自治体となっている。






