苦境下も今季初水揚げ 市特産の「広田湾産イシカゲ貝」 養殖中の稚貝は順調に成育 来季以降の生産量回復に期待(別写真あり)

▲ 今季初水揚げを迎えたイシカゲ貝=気仙町・要谷漁港

 陸前高田市の広田湾漁業協同組合(砂田光保組合長)が生産する特産品「広田湾産イシカゲ貝(エゾイシカゲガイ)」の初水揚げ作業が25日、市内各漁港で行われた。黒潮の大蛇行や地球温暖化を背景とした海水の高温化によって死滅が相次ぎ、今年の生産量は昨年を下回る約1・1㌧にとどまる。初出荷は26日に行われるが、数量減に伴い、今季の出荷はこの1回で終了となる見通し。一方で、現在養殖している稚貝は順調に育っているといい、生産者は今後の海洋環境や生産量の回復に期待を込めながら、陸前高田が誇るブランド貝の復活に向けて丁寧に管理にあたる。(菅野弘大)

 

 25日は、生産者で組織する広田湾産イシカゲ貝生産組合(熊谷信弘組合長)の組合員らが、早朝からの水揚げ作業などに追われた。今年は14軒の漁家が養殖を手がけており、気仙町の要谷漁港では、熊谷組合長(70)らが翌日の出荷分を水揚げ。海水できれいに洗い、手作業で選別し、規定量ごとにネットに入れた。
 その後、長部漁港の施設に移し、流水で管理。26日に箱詰めして、東京・豊洲市場への出荷を予定する。
 広田湾漁協や生産組合によると、今季は近年続いた高水温の影響を受け、出荷するはずだった貝の約8割が死滅。砂と稚貝を入れた容器をかごに収め、海中につるす手法で養殖し、半年に1回の分散作業(間引き)などを経て、出荷までには丸2年を要するが、生産者が各自確保している天然稚貝の数が大幅に減り、養殖する量が例年より少なかったことも重なり、生産量は昨季と比べて約7㌧減少した。
 高級二枚貝として料亭やすし店などで取り扱いがある広田湾産イシカゲ貝。同市では、平成8年に全国初となる養殖の事業化を実現し、東日本大震災の津波で養殖施設も壊滅的な被害を受けたが、生産者らは地道に復旧作業を進め、稚貝の採捕や施設の復旧を経て、26年に出荷再開にこぎ着けた。
 広田湾漁協は、市などと連携してブランド化を推進。令和4年2月には、唯一無二の希少さと生産者の品質向上への努力が認められ、地域ブランドを知的財産として保護する国の「地理的表示(GI)保護制度」に産品登録された。
 生産量は2年度約33㌧、3年度約63㌧、4年度約84㌧と順調に増産。豊洲市場をはじめ、関西や中部、東北の地方卸売市場にも出荷していたが、近年は黒潮大蛇行や地球温暖化により、海が高温化。特にも、イシカゲ貝は高水温の影響を受けやすいとされ、夏場の高水温にさらされた結果、へい死が相次いだ。5年度は約59㌧、6年度は約16・1㌧、7年度は約8・1㌧と大幅な減産が続いている。
 貝特有の歯ごたえもありつつ、簡単にかみ切れる柔らかな食感のイシカゲ貝。現場では減産が続く一方、市場での需要は依然として高いという。
 広田湾漁協気仙支所の合口潤主任(42)は「直近3年は全て豊洲市場に出荷している。年々、知名度も上がり、向こうでも『夏はイシカゲ貝』との認識が定着しているのではないか」と話す。
 自然環境に翻弄され、養殖の継続を断念した漁家もいたという。それでも、生産者らは市内のみで養殖されているブランド貝の歴史をつないでいこうと知恵を絞る。高水温対策の一環で、イシカゲ貝の養殖施設を活用したアサリの試験養殖に取り組む動きもある。
 熊谷組合長は「種(稚貝)が採れず、死滅も多かったことから、数量は今季が底なのではないか。黒潮の大蛇行が終息し、昨年後半から水が変わってきている感じがあり、成育は良い」とし、「市場での引き合いも強く、出荷を望んでもらっている中で量を出せないのは心苦しい。夏の暑さを乗り越えられれば、来年以降は回復していくように思う。陸前高田のブランド貝を全国で食べてもらえるように、作業サイクルを変えるなどの試みも行いながら、育てていきたい」と見据える。