木工品から可能性発信 大規模林野火災 被災木活用 入手環境充実に期待も

▲ 被災木からの製材を生かした木工品作りを進める平田木工所

 大船渡市大規模林野火災の発災から来月で1年半を迎える中、被災木からの製材を生かし、木工品を制作する取り組みに関心が集まっている。今月市内で開催された「大規模林野火災に学ぶ講演会」では、木工品を並べた展示スペースに多くの人々が訪れたほか、市内の事業所でも製品作りが進む。今秋以降、被災木の伐採本格化とともに、多彩な利活用に加え、さまざまな団体が木材や製材品を入手しやすい環境づくりにも関心が高まりそうだ。(佐藤 壮)

 

発災から来月で1年半

 

 三陸町越喜来の平田木工所(平田浩喜代表)には、大規模林野火災で被災した綾里地区で伐採されたスギやアカマツからの製材を生かした、時計やランプシェードの木工品が並ぶ。平田代表(57)が東日本大震災発生後に磨いた組子技術を生かし、一つずつ丁寧に手作業を重ねた。
 いずれも、細い木板による組子の仕組みを利用した繊細なデザインが目を引く。これまでも他の材料で時計やランプシェードを手がけてきたが、先月、被災したスギやアカマツを乾燥加工させた製材を入手し、制作を進めた。 
 組子作品に、スギやアカマツを材料として使用したのは初めてという。特にスギは、これまで用いてきたヒノキ材やホオノキ材と比べ、柔らかく、折れやすい。それでも、平田代表は独自の技術と工夫を駆使して完成させている。
 今月15、16日にリアスホールで開かれた市主催の「大規模林野火災に学ぶ講演会」では、講演会場隣の展示スペースに県内木工作家による被災木を活用した木工作品や家具が並び、関心を集めた。平田代表も時計などを出品し、復旧・復興への思いを込めた。
 大規模林野火災では、作業場や自宅は避難指示の対象外だったが、出火した昨年2月26日から1週間以上は、煙がよく見えた。綾里の小石浜地域や、越喜来の甫嶺地域で、火が広がる様子も目にし、鎮圧・鎮火を願い続けた。
 平田代表は「木工作家の中で唯一大船渡からの出品だったので、他の地域の人たちが頑張っている中で、自分も頑張ろうと思った。黒ずんだり、焦げていた部分は使っておらず、見た目は被災木を使ったことを感じさせない。品質としては問題がない」と語る。来月も、県外で開催されるイベントに県内の木工作家とともに出品することにしている。
 時計やランプシェードなど、住宅などで使いやすい作品が多いが、平田代表は「生活に溶け込みやすいものがいいのでは。ふとした時に被災地のことを考え、火災に注意しようと思う気持ちが生まれやすいのではないか」と話す。木そのものの魅力を引き立てる、飽きのこないデザインに仕上げている。
 自らの作品作りだけでなく、多くの事業者や趣味で木工を楽しむ人々が、被災木からの製材を入手しやすい環境づくりも願う。「今後年数が経過して、立木の乾燥が進んでも、少量の板ならば立派な材料として確保できると思う。少量でも手に入れやすくなれば」と期待を込める。
 大規模林野火災からの復旧・復興に向け、森林再生事業に伴い伐採される被災木の有効活用は欠かせない。大規模林野火災の延焼面積は3370㌶に至り、このうち人工林が半数超を占める。伐採は広大な面積に及び、まとまった量の流通先確保が最優先課題ではあるが、少量でもさまざまな団体、個人が使用することで、新たな利活用や交流人口の拡大、情報発信につながる。
 被災林で伐採した木材や、製材品の利活用に関しては、気仙地方森林組合などが相談に応じているが、現状では森林災害復旧事業に伴う本格的な伐採に入っておらず、希望する量や種類には応じきれない状況が予想されるという。今秋以降、伐採本格化が見込まれ、幅広い分野で利活用しやすい流通の行方も注目される。