放球成功 今後に弾み 湾口防南側で気球実験 ロケット開発企業が実施 地形や宇宙研の実績後押し(動画、別写真あり)
令和8年8月1日付 7面
大船渡市末崎町の大船渡港湾口防波堤南側付近で7月31日、ロケット開発を手がけるAstroX㈱(アストロエックス、本社・福島県南相馬市、小田翔武代表取締役CEO)による気球の放球実験が行われた。計画通り飛行し、約20㌔離れた南東の沖合で機材の回収に成功。市内では平成19年まで、三陸町吉浜に文部科学省・宇宙科学研究所などによる三陸大気球観測所があり、今回の放球でも地元関係者の協力体制が良好だったことから、同社は今後も市内での実験の検討を続ける。(佐藤 壮)
同社は、気球とロケットを組み合わせた空中発射システム「Rockoon(ロックーン)」の開発を進めている。本年度中には、新型ロケットをつり下げた大型気球を放球し、サブオービタル(地上から出発し、高度100㌔程度まで上昇後、地上に帰還する方式)での宇宙空間到達を目指す計画だ。
放球実験は、同システムの確立に向けたデータ収集の一環として実施。湾口防波堤南側付近の民有地では同日夜明け前から、同社関係者17人が作業を進めた。直径約8㍍の気球にヘリウムガスを注入すると、高さ13㍍にまで膨らんだ。
午前5時30分すぎ、気球に取り付けていたワイヤが切断され、つり下げていた約40㌔の積載機材とともに飛び立った。事前のシミュレーション通り高層風に乗り、南東の海上を進んだ。
10分後には高度2000㍍を超え、同4000㍍に達した時点で、地上から信号を送って気球を破裂させ、積載機材はパラシュートで降下。同6時前には沖合に着水し、専用船で浮遊機材の回収にも成功した。
現地統括を担ったアストロエックスグランドオペレーションの下村潤さん(51)は「海に向けて飛ばすのは初めてだったが、予測着水点に落とすことができ、満点といえる実験だったのではないか」と手応えを語る。
今回の打ち上げ場所は、南東側が海に接し、まとまった平場があることから選定し、用地調整には市も協力した。下村さんは「大船渡では約20年前までJAXA(宇宙航空研究開発機構)が放球を行っていた実績は分かっていた。地域の方々に実験を前向きにとらえていただき、協力的だった」と振り返る。
そのうえで「アストロエックスとしては、最終的には年間50基の打ち上げを目指しているが、いくつかの打ち上げ場所を確保しないと難しい。大船渡でも継続的に実験の検討をしたい。地域の皆さんと緊密に連携し、学校に出向いての出前授業などもできれば」と今後を見据える。気球を大型化させるなど、引き続き打ち上げに向けた放球実験を重ね、拠点の南相馬市以外での適地を探る。
昭和46年、三陸町吉浜に日本で最初の実験恒久基地となる東京大学宇宙航空研究所付属三陸大気球観測所が開所。同年には、宇宙塵採集や気象観測を目的とした第1号の気球放球が行われた。
平成19年まで、文科省の宇宙科学研究所やJAXAの大気球観測センター・三陸大気球観測所などとして放球が行われた。こうした縁で、市はJAXA施設を置く市町による「銀河連邦共和国」の構成自治体となっている。






