味を守り体験拠点にも 「お食事処 翁」 地域おこし隊員が継承へ 特産品発信や高校生利用見据えCF

▲ 鈴木店主㊨から味を受け継ぎながら店舗利活用に意欲を見せる津田さん

 大船渡市盛町の「お食事処 翁」(鈴木滋店主)で、特産品製造の体験や高校生の学習、チャレンジショップを出せる空間をつくろうと、市地域おこし協力隊の津田和美さん(51)がクラウドファンディング(CF)に挑戦している。鈴木店主(82)が10月で引退し、翌月から津田さんが事業を継承。津田さんは味を守りながら営業を続けるとともに、地元特産品の魅力発信や高校生らの居場所づくりに意欲を見せる。(佐藤 壮)

 

 鈴木店主は、盛町商店街通りでの飲食店や、大船渡地区合同庁舎内にある食堂で腕をふるい、約30年前、中井大橋たもとに現店舗をオープンさせた。ここ数年は昼時間の営業で、定食や丼物、カレーライスなどの提供が主だが、店内には70人程度まで収容できる座敷があり、長年、宴会でも盛んに利用された。
 また、店内には開店当初から、市内で実際に漁に使われた「かっこ船」を加工し、相席で20人程度まで利用できる、水槽が組み込まれたテーブルがある。地域住民はもちろん、気仙に赴任してきた県職員らにも親しまれている。
 近年は鈴木店主一人で切り盛りする時間が長く、体力の限界を感じるようになった。今年に入り、店舗の貸し出しを周知したところ、愛知県出身で、昨年4月から市内で地域おこし協力隊として活動する津田さんが名乗りを上げた。
 料理メニューの基本となるラーメンスープの作り方などは、鈴木店主から引き継ぐ。メニューは絞りながらも「食事どころ」としての営業は守る。鈴木店主は「長年商売をやっていると、昔からの味でお客さんもついている。味のベースを引き継いでくれるのはうれしい。でも、どんどん自由にやってほしい」と話す。
 津田さんは味の継承に加え、昼食時間帯中心の営業としては広い店舗を生かし、体験・出店スペースの整備を見据える。座敷部分では三陸町越喜来特産の「柿の葉茶」に加え、越喜来湾の海水を生かした塩づくりの体験を計画。いずれも、津田さんが着任以降、作業を手伝う中で魅力に引かれるとともに、担い手不足による継承の危機も感じ取っていた。
 店舗前には多くの高校生らが行き交う道路があり、学習スペースの提供も目指す。さらに小上がり部分にはチャレンジショップとして出店者の受け入れや、他の地域おこし協力隊が生産・製造に関わる商品を置くことで、若い世代に起業や地域資源開発を身近に感じてもらう流れも描く。
 津田さんは「この店舗が受け入れ先となって新たな地域おこし協力隊員を呼び込みたい。大船渡にはいい商品がいっぱい存在するが、意外に大船渡の人が知らない現状もあり、アンテナショップのような役割も担うことができれば。CFでは資金確保はもちろんだが、活動を知ってもらうことで、協力の輪を広げられたら」と話す。
 CFは、インターネットサイトの「For Good(フォーグッド)」で受け付けている。期間は9月末まで。